嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「お帰りなさいませ、ヴァルト様」
「ああ」

 抱き上げられてキスされそうなところを、手のひらですかさずブロックした。口をふさがれたまま眉間にしわを寄せたジークヴァルトに、にっこりと微笑み返す。

「今夜はお伝えしないとならないことがあって……」

 もじもじしながら言うと、さらに眉間のしわが深まった。子ども抱きにされたまま、青の瞳と見つめあう。

「わたくし、今夜からしばらく自分の部屋でひとりで寝ようと思って」
「なぜだ?」

 生理が来たからとストレートには言えなかったリーゼロッテに、ジークヴァルトは怖いくらいに真剣な表情を向けてきた。居間のソファで膝に乗せられ、いつも以上にきつく腕を回される。

「あの、その、それが……」
「何があった? 何が不満だ? 隠さず正直に言え」

 鬼気迫る物言いに、ちょっと()()づく。これは何か誤解しているのかもしれない。不信感もあらわな態度に、リーゼロッテは慌てて首を振った。

「不満などではなくて! わたくし、その……つ、月のものが来てしまって……」

 尻つぼみに正直に伝える。伺うようにジークヴァルトを見上げるも、頬が熱を持ち、恥ずかしさのあまり目をそらして俯いた。

「それは……一緒に寝られないほど、つらいものなのか……?」
「え?」

 予想しなかった返答に思わず顔を上げる。不信感を通り越して絶望の瞳になっているジークヴァルトを、リーゼロッテはぽかんと見つめた。

「いえ……薬湯も飲んでいますしそれほどでは……」
「ならばなぜひとりで寝る必要がある?」
「だって、それは……」

 口ごもるとジークヴァルトの腕に力がこもった。まるで逃がさないと言われているようで、リーゼロッテは動揺で目を泳がせる。

「まだ何かあるのか? オレには言えないことか?」

 あまりの必死さにリーゼロッテは涙目になった。生理の不快加減をいちいち説明しなければならないのだろうか。だが男のジークヴァルトに、言わずともそれを理解しろというのも無理な話だ。

「その、寝ているときに、夜着や寝台を汚してしまうこともございますので……」

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