月明かりの下で、あなたに恋をした
【柊さんへ
段ボールを開けたんですね。
それだけで、大きな一歩です。
ぜひ、お会いしたいです。
作品、見せてください。
今週末、土曜日の午後はいかがですか?
駅前のカフェ「ブルームーン」で。
14時でどうでしょうか。
楽しみにしています。
葛城】
私は、何度もメールを読み返した。
葛城さんに会える。土曜日に、会えるんだ……!
これまでにないくらい、胸が高鳴る。私はすぐに返信を書いた。
【葛城さんへ
ありがとうございます。
土曜日の午後2時、伺います。
柊彩葉】
送信したあとも、私はしばらく個室から出られなかった。ドキドキが止まらない。
土曜日まであと4日。葛城さんに、会える。そして、作品を見せる。
怖いけど、楽しみ。久しぶりの高揚感。
そして──彼に会いたい。その気持ちが、一番強かった。
◇
土曜日、午後2時。私は駅前のカフェ「ブルームーン」の前に立っていた。
落ち着いた外観。ガラス窓から、温かな照明が見える。
私は、深呼吸する。トートバッグには、『星降る森のおくりもの』が入っている。
大丈夫。意を決し、私は扉を開けた。
店内は静かで、木の温もりを感じるインテリア。
店内を見渡すと、窓際の席にいた──葛城さんだ。