社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
「俺はね、ちひろ。話してくれなかった君にも、文句を言いたいんだ」
「っ、え?」
「ミーティングで発表することになったなんて、以前の君なら絶対ブログに書く大事件なのに、触れもしなかった。俺に内緒にするつもりだったんだろう?」
「う……」
 じっとりとした目で睨めつけられ、私は思わず口ごもった。
 確かにその通り。
 以前の私なら『どうしよう』と焦ってブログに書いて、読者さんのコメントに縋っていただろう。
 それをしなかったのは、部長のご指摘通り。
 ブログ上では今でも読者の『湯けむり旅情』さんである彼に、知られたくなかったからだ。
「だって……部長が聞きに来ようとするのはわかってましたし」
「当然」
「部長に聞かれてると、緊張しちゃうから」
「今さら? 俺に対してまだ緊張することがあるのか? 君は」
「しますよ……!」
 呆れた口調に、ムキになって言い返した。
「他の誰でもない、部長だから、ドキドキして緊張するんです。もう……どうして部長はわからないんですか……」
「俺は、他の人間が知ってる君のこと、自分が知らずにいる方が嫌だ」
「……え?」
「現に、光山は君を褒めていたじゃないか。だが、ちひろの発表を聞けなかったおかげで、俺にはそれができない」
 思いも寄らなかった理由に意表をつかれ、私は思わず瞬きを繰り返した。
 そんな私に、部長は照れくさそうに眉をハの字に下げる。
「ちひろにはピンとこないか? まあ……男特有なのかもしれないな。この手の独占欲は」
「…………」
「光山に嫉妬してると言い換えてもいい」
 きまり悪くなったのか、ぷいと顔を背けてしまった。
「嫉妬……ですか?」
 不機嫌になる部長には申し訳ないけど、沸々と込み上げる嬉しさで、私の声はちょっと弾む。
< 102 / 104 >

この作品をシェア

pagetop