社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
プロジェクト始動
社を挙げたプロジェクトチームの発足により、早速海外事業部の各チームで、選抜メンバーたちの引き継ぎが始まった。
みんな忙しそうだけど、事務職の私には、特に引き継ぎはない。
通常の業務は、もう一人の事務職の先輩と二人体制で、あとはほぼ総合職社員のサポートだからだ。
「ちょっとー。うちのチーム、どうして事務職の補充がないわけ?」
背後で、村重さんが不服そうな声をあげた。
「下っ端一人抜けたら、誰が私たちのサポートするのよ」
「お前、アシスタント頼りすぎだからなあ。宇佐美さんが抜けたら大変だよな」
「大村君だって、人のこと言えないでしょ」
大村さんと二人、憚ることなくボヤいている。
しっかり声は届いているけど聞こえていないフリをして、私は前を向いたまま肩を縮めた。
うちのチームのもう一人の事務職社員は、今年十年目のベテランだ。
後ろの二人より先輩で、それもあって仕事を頼みにくいらしい。
村重さんも大村さんも、自分でやるようになるだろうか。
どちらにしても、今までのように『ちょっと片付けといて』的な仕事は振れないだろう。
でも結果的には彼女たちのため、そして他の事務職社員のためになるはず。
海外事業部全体の空気がよくなるかもしれない。
湯浅部長はそこまで計算して、私をこのチームから外したんだろうか。
そうだとしたら、さすがとしか言いようがない。
「事務仕事を事務職にやらせてなにが悪いのよ。それが事務職の役割でしょうが」
「だったらなにも気にせず、今まで通り頼めばいいじゃないか。もう一人いるんだし」
「あの人はダメよ。主任の仕事ばかりやってるし。だいぶ前に集計頼んだ時、自分でやれって断られたのよ?」
「たまたま手が空いてなかったんじゃないか?」
「ううん。引き受ける人を厳選してるのよ。私のことはバカにしてる」
「そんなことないだろ」
村重さんの言い分は完全に被害妄想だと思うけど、事務職の先輩は私と違ってしっかり断ることができる人だ。
みんな忙しそうだけど、事務職の私には、特に引き継ぎはない。
通常の業務は、もう一人の事務職の先輩と二人体制で、あとはほぼ総合職社員のサポートだからだ。
「ちょっとー。うちのチーム、どうして事務職の補充がないわけ?」
背後で、村重さんが不服そうな声をあげた。
「下っ端一人抜けたら、誰が私たちのサポートするのよ」
「お前、アシスタント頼りすぎだからなあ。宇佐美さんが抜けたら大変だよな」
「大村君だって、人のこと言えないでしょ」
大村さんと二人、憚ることなくボヤいている。
しっかり声は届いているけど聞こえていないフリをして、私は前を向いたまま肩を縮めた。
うちのチームのもう一人の事務職社員は、今年十年目のベテランだ。
後ろの二人より先輩で、それもあって仕事を頼みにくいらしい。
村重さんも大村さんも、自分でやるようになるだろうか。
どちらにしても、今までのように『ちょっと片付けといて』的な仕事は振れないだろう。
でも結果的には彼女たちのため、そして他の事務職社員のためになるはず。
海外事業部全体の空気がよくなるかもしれない。
湯浅部長はそこまで計算して、私をこのチームから外したんだろうか。
そうだとしたら、さすがとしか言いようがない。
「事務仕事を事務職にやらせてなにが悪いのよ。それが事務職の役割でしょうが」
「だったらなにも気にせず、今まで通り頼めばいいじゃないか。もう一人いるんだし」
「あの人はダメよ。主任の仕事ばかりやってるし。だいぶ前に集計頼んだ時、自分でやれって断られたのよ?」
「たまたま手が空いてなかったんじゃないか?」
「ううん。引き受ける人を厳選してるのよ。私のことはバカにしてる」
「そんなことないだろ」
村重さんの言い分は完全に被害妄想だと思うけど、事務職の先輩は私と違ってしっかり断ることができる人だ。