社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
『あの人は自分でやらなさすぎ。スケジュール管理もまったくダメだし、少しは自分でやって、基本から覚え直すべきなのよね』
以前村重さんについて、そう言っていたのを聞いたことがある。
私のようになんでも引き受けていては、本人のためにならないんだろうけど、村重さんは私だから頼めていたのだろう。
少なくとも、私にも存在意義があったのかもしれない。
そう考えると、ちょっぴり救われた気持ちになれる。
「大体、なんで宇佐美さんなのよ。アシスタントなら、他の事務職でもいいじゃない」
聞こえるように言っているとしか思えないほど、村重さんのボヤキは尽きない。
「人使い荒いヤツの下でも、嫌な顔しないからじゃないか?」
大村さんにツッコまれても、悪びれる様子はない。
「じゃあ、私のおかげってことよね。感謝してほしいもんだわ。……ちょっと、宇佐美さん!」
「っ、は、はい?」
ついにはっきりと呼びかけられ、私は慌てて振り返った。
「法務部に書類取りに行って。通番112番。印鑑忘れないでよ」
「は……」
「おいおい村重。法務部ってことは、リーガルチェック済ませた契約書じゃないか?」
私が返事をする途中で、大村さんが眉をひそめた
「そうだけど?」
「そんな大事な書類なら、自分で行った方がよくないか?」
「大事な書類だから、優秀な事務職に行かせるんじゃない。そういうことだから、しっかりデリバリーしてよ、宇佐美さん」
「わかりました」
私は返事をしながら、印鑑を手に取って立ち上がった。
首にかけた社員IDを確認して、歩き出す。
「まだうちのチームのアシスタントなんだから、最後まできっちり役目果たしてもらわなきゃね」
村重さんは大村さんに言ったのか、それとも私に言ったのか……。
でも、これもあと数日のこと。
私は素直に法務部に向かった。
以前村重さんについて、そう言っていたのを聞いたことがある。
私のようになんでも引き受けていては、本人のためにならないんだろうけど、村重さんは私だから頼めていたのだろう。
少なくとも、私にも存在意義があったのかもしれない。
そう考えると、ちょっぴり救われた気持ちになれる。
「大体、なんで宇佐美さんなのよ。アシスタントなら、他の事務職でもいいじゃない」
聞こえるように言っているとしか思えないほど、村重さんのボヤキは尽きない。
「人使い荒いヤツの下でも、嫌な顔しないからじゃないか?」
大村さんにツッコまれても、悪びれる様子はない。
「じゃあ、私のおかげってことよね。感謝してほしいもんだわ。……ちょっと、宇佐美さん!」
「っ、は、はい?」
ついにはっきりと呼びかけられ、私は慌てて振り返った。
「法務部に書類取りに行って。通番112番。印鑑忘れないでよ」
「は……」
「おいおい村重。法務部ってことは、リーガルチェック済ませた契約書じゃないか?」
私が返事をする途中で、大村さんが眉をひそめた
「そうだけど?」
「そんな大事な書類なら、自分で行った方がよくないか?」
「大事な書類だから、優秀な事務職に行かせるんじゃない。そういうことだから、しっかりデリバリーしてよ、宇佐美さん」
「わかりました」
私は返事をしながら、印鑑を手に取って立ち上がった。
首にかけた社員IDを確認して、歩き出す。
「まだうちのチームのアシスタントなんだから、最後まできっちり役目果たしてもらわなきゃね」
村重さんは大村さんに言ったのか、それとも私に言ったのか……。
でも、これもあと数日のこと。
私は素直に法務部に向かった。