社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
 外観はシックなレンガ造りだった。
 店内もヨーロッパのアパートメントとかフラット感があって、モダンでおしゃれ。
 お店自体はそれほど広くはないけど、天井が高く開放的だ。
 近代的なオフィスビルが立ち並ぶ丸の内地区に、ちょっとしたオアシスといった風情がとても落ち着く。
 ギリギリの入店で、私が案内されたのはテラス席だ。
 十月も後半、この時間はまだ空気が冷たいけど、天気のいい日の昼下がりは、きっと気持ちいいだろう。
 目の前は広い大通りで、土曜日の今日でも人通りが多い。
 平日だったら、もっとエネルギッシュな風景だろう。
 光山さんも出勤前にここで朝食をとりながら、たくさんのビジネスマンを眺めているのかな?
 その中にはもしかしたら、仕事のライバルやいつかの未来、共に仕事をする仲間がいるかもしれない。
 そんなことを想像してみると、ちょっとワクワクしてくるな……。
 テーブルに両手で頬杖をついて、少しだけ笑みを浮かべながら、通りを眺める。
 すると、なにやら見覚えのある人の姿が視界を横切った。
 その人は、このカフェの出入口に回っていく。
「あれ……?」
 思わず声に出して頬杖を解き、私はお店の出入口を振り返った。
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