社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
この後の用って、仕事だろうか?
スーツだしその可能性が高いけど、普段より少し寛いだ感じがするのは、髪のセットが緩めなせいかな……?
ついつい部長の予定を詮索して、私が向ける視線は不躾だったのかもしれない。
部長はグラスをテーブルに戻すと、怪訝そうに首を傾げた。
「どうかしたか?」
「あ! い、いえっ。すみません、ジロジロと……」
肩を力ませ、ぎゅっと目を瞑って頭を下げると、わずかな間の後、小さな溜め息が聞こえた。
そして。
「宇佐美さん。そんなに私は怖いか?」
「……え?」
部長の質問を、一旦自分の中で咀嚼して、私は部長にまっすぐ視線を返した。
「今、君は怯えているんじゃないか?」
言葉を変えただけのストレートな質問に、否定を忘れて困惑する。
「えっと……?」
曖昧に首を傾げると、部長はきまり悪そうに目を逸らした。
「自覚はしているんだ。私は周りの人間に怖がられる。部長に昇進する以前から、ずっと」
そう言って、溜め息を重ねる。
「海外事業部では、鬼を通り越して鬼神とまで言われているようだし……」
「っ! ごほっ……」
「忌憚ない意見を言ってくれないか? 君も私を怖がってるのか?」
きっと、部長にとっては切実な悩みなのだろう。
思わず噎せ返った私に、前のめりになって訊ねてくる。
自覚はしてると言ったし、自分でもなんとかしたいと考えていて、でもどうにもならなかったんだと思う。
そうやって、長年悩んできたのかもしれない。
そんな部長に、私はちょっぴり親近感を覚えていた。
スーツだしその可能性が高いけど、普段より少し寛いだ感じがするのは、髪のセットが緩めなせいかな……?
ついつい部長の予定を詮索して、私が向ける視線は不躾だったのかもしれない。
部長はグラスをテーブルに戻すと、怪訝そうに首を傾げた。
「どうかしたか?」
「あ! い、いえっ。すみません、ジロジロと……」
肩を力ませ、ぎゅっと目を瞑って頭を下げると、わずかな間の後、小さな溜め息が聞こえた。
そして。
「宇佐美さん。そんなに私は怖いか?」
「……え?」
部長の質問を、一旦自分の中で咀嚼して、私は部長にまっすぐ視線を返した。
「今、君は怯えているんじゃないか?」
言葉を変えただけのストレートな質問に、否定を忘れて困惑する。
「えっと……?」
曖昧に首を傾げると、部長はきまり悪そうに目を逸らした。
「自覚はしているんだ。私は周りの人間に怖がられる。部長に昇進する以前から、ずっと」
そう言って、溜め息を重ねる。
「海外事業部では、鬼を通り越して鬼神とまで言われているようだし……」
「っ! ごほっ……」
「忌憚ない意見を言ってくれないか? 君も私を怖がってるのか?」
きっと、部長にとっては切実な悩みなのだろう。
思わず噎せ返った私に、前のめりになって訊ねてくる。
自覚はしてると言ったし、自分でもなんとかしたいと考えていて、でもどうにもならなかったんだと思う。
そうやって、長年悩んできたのかもしれない。
そんな部長に、私はちょっぴり親近感を覚えていた。