社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
昨夜のブログに、人事異動で鬼を通り越して鬼神とまで恐れられる上司に代わったことを書いたら、翌朝こんなコメントが寄せられていた。
『上に立つ人間に限らず、本当にデキる人間というのは、ちゃんと人を見ているものです。臆病うさぎさんの新しい上司が噂通りの逸材なら、一週間もあれば部員全員覚えられるはず。もしあなたが覚えてもらえないようなら、大したことないですよ、その上司。鬼神返上、できるといいですが』
思わず頬の筋肉が緩んでしまい、すぐに電車の中なのを思い出して、慌てて表情を引き締める。
言うなあ、『湯けむり旅情さん』。
心の中で呟きながら、もう一度コメントを読み返す。
ユーザーネーム『湯けむり旅情』さんは、去年の暮れくらいからコメントをくれるようになった、比較的新しい読者さんだ。
最初は、職場での悩みを綴ったブログへのコメントだった。
いつから読んでくれているのかわからないけど、他の読者さんと違って、職場の出来事や自身の悩みの投稿に対して、コメントしてくれることが多い。
ウィットに富んだ内容や文章の感じから、私より少し年上の女性で、人の上に立つキャリアウーマンじゃないかと、私は勝手に予想している。
頭がよくて、優れた能力を持つ人。
周りからの信頼も厚くて、イメージは頼れるお姉さん。
私とはまるで正反対で、彼女のコメントに『なるほど』と思えることはたくさんあっても、実践できるかといったらちょっと難しい。
だけど今日のコメントは、なかなか痛快だった。
新部長が本当に有能な人か、私なんかが評価する……現実では畏れ多すぎるけど、二次元コミュニティでこっそり結果発表するだけなら面白そう。
少しの間、『湯けむり旅情』さんへの返事を考えてから、私はスマホに指を滑らせた。
『うちの部は人数が多く、毎日全員がいるわけじゃないので、一週間では厳しいかもしれません。なので、二週間くらいの猶予は必要でしょうか……。新しい上司が私のことを覚えてくれるか、どのくらい時間がかかるか、観察してみますね』
最後に一度見直して送信。
送信完了を見届けると、ぼんやりとスマホを眺めた。
ーーブログの中なら、思ったままに話せる。
顔も名前も知らない、目の前にいない相手とは楽しく『おしゃべり』もできるのに、現実の私といったら……。
『上に立つ人間に限らず、本当にデキる人間というのは、ちゃんと人を見ているものです。臆病うさぎさんの新しい上司が噂通りの逸材なら、一週間もあれば部員全員覚えられるはず。もしあなたが覚えてもらえないようなら、大したことないですよ、その上司。鬼神返上、できるといいですが』
思わず頬の筋肉が緩んでしまい、すぐに電車の中なのを思い出して、慌てて表情を引き締める。
言うなあ、『湯けむり旅情さん』。
心の中で呟きながら、もう一度コメントを読み返す。
ユーザーネーム『湯けむり旅情』さんは、去年の暮れくらいからコメントをくれるようになった、比較的新しい読者さんだ。
最初は、職場での悩みを綴ったブログへのコメントだった。
いつから読んでくれているのかわからないけど、他の読者さんと違って、職場の出来事や自身の悩みの投稿に対して、コメントしてくれることが多い。
ウィットに富んだ内容や文章の感じから、私より少し年上の女性で、人の上に立つキャリアウーマンじゃないかと、私は勝手に予想している。
頭がよくて、優れた能力を持つ人。
周りからの信頼も厚くて、イメージは頼れるお姉さん。
私とはまるで正反対で、彼女のコメントに『なるほど』と思えることはたくさんあっても、実践できるかといったらちょっと難しい。
だけど今日のコメントは、なかなか痛快だった。
新部長が本当に有能な人か、私なんかが評価する……現実では畏れ多すぎるけど、二次元コミュニティでこっそり結果発表するだけなら面白そう。
少しの間、『湯けむり旅情』さんへの返事を考えてから、私はスマホに指を滑らせた。
『うちの部は人数が多く、毎日全員がいるわけじゃないので、一週間では厳しいかもしれません。なので、二週間くらいの猶予は必要でしょうか……。新しい上司が私のことを覚えてくれるか、どのくらい時間がかかるか、観察してみますね』
最後に一度見直して送信。
送信完了を見届けると、ぼんやりとスマホを眺めた。
ーーブログの中なら、思ったままに話せる。
顔も名前も知らない、目の前にいない相手とは楽しく『おしゃべり』もできるのに、現実の私といったら……。