社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
 なんか、今日の私、どうしたんだろう?
 仕事の上司、しかも部のトップの部長に対して、こんな普通にいろんなことを喋っちゃうなんて、私らしくない。
 振り返るまでもなく失態のオンパレードで、頭から湯気が出そうだ。
 部長の方はというと、先ほどの爆笑ほどではないけど、肩を揺らして小刻みな笑い声を漏らし続けている。
 そして……。
「宇佐美さんは、人とのコミュニケーションがあまり上手ではないんだろうと踏んでいたんだが、そういうわけじゃなさそうだ」
「……え?」
 目尻の涙を拭いながら、さらりと口にした部長に、私はわずかな間を置いて聞き返した。
 言われた意味を、瞬時に理解できなかった。
「コミュニケーション能力がないわけじゃない、『NO』が言えないのは、優しすぎるからかと思ったんだが……違ったかな?」
 言葉を変えて訊ねられ、私は力いっぱい首を縦に振って応えた。
「ち、違います。お察しの通り、私は上手く話せないので、人の輪に入るのが怖くて……」
「だが、私はわりと普通に話せていると思うが……これも違うか?」
 眉尻を下げて質問を畳みかけられ、私は虚を衝かれた気分で言葉をのんだ。
 首を傾げて私の返事を待っている部長の前で、しばし目を見開いたままフリーズする。
< 53 / 104 >

この作品をシェア

pagetop