社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
 光山さんも私の反応に戸惑ったようで、
「えーと……」
 手を放し、指先でポリッとこめかみを掻く。
「プロジェクトチームとか別に、宇佐美さんともっと話してみたいんだよね」
「…………」
 「あ! だからって、変な意味じゃないよ? プライベートでも関わりがあるとないとじゃ、仕事のモチベーションも変わってくるでしょ?」
 前のめりになって説明されて、私も勢いに負けて頷いた。
「それは……その通りだと思います。でも……」
「そうでしょ? 特に俺と宇佐美さんはリーダーとたった一人の事務職で、打ち解けた間柄の方がやりやすいと思うんだよね」
「それは……」
 光山さんが言いたい意味は私もわかる。
 実際、私の仕事の大半は光山さんからの指示だし、その方がプロジェクト業務も円滑に進むだろう。
 でも、プライベートで打ち解けた間柄になるなんて、私にできるだろうか?
 難解なハードルな気がして、簡単には頷けない。
「予定ない? じゃ、OKってことでいい?」
 私が黙りこくったからか、光山さんは了承と捉えたようだ。
「焼き鳥が美味い店あるんだ。ここからそう遠くないから、そこに行こうか」
「えっ?」
「席が無くなるといけないから、予約しとくよ」
 そう言いながら、スラックスのポケットからスマホを取り出す。
「あ、あの。でも、私……」
「七時でいいかな。いいよね?」
 私が声を挟んでも構わず、早速スマホを操作し始めてしまい、私は焦った。
 どうしよう。二人でなんて困る。
 でも、プロジェクトのことを言われたら断りにくい。
 どうしよう。どうしよう。どう……。
「光山さん、あのっ……」
「光山、やめておけ」
 勇気を出して呼びかけた私の声は、凛とした低い声に遮られた。
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