社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
 ネガティヴで独りよがりな心の叫び。
 一体どんな批判や非難の言葉だろう……。
 すごく怖かったけど、私は勇気を振り絞ってコメントを開いた。
 そうしたらーー。
『あなたの悩み、よくわかります。だって私も同じだから』
 意外にも、それは共感の声だった。
 いつも他人に合わせてきた私が、自分の本心を晒して誰かに共感してもらえるなんて……。
 初めての不思議な感覚を機に、私はブログを公開してみることにした。
 すると、少しずつ応援のコメントが寄せられた。
 もちろん、みんながみんな共感してくれるわけじゃない。
 批判されたことも何度かある。
 だけどいつも、励ましの声に支えられてきた。
『どこにでもアラシはいる。気にしないで』 
『ブロックしちゃえばいいよ。あなたのブログ、読んでほしい人だけに公開すればいいんだから』
 ネットワークはたくさんの人と繋がることができて、コメントをくれるのがどこの誰かはわからない。
 名前も知らない、顔も見えない、声も聞こえない。
 私のブログに眉をひそめていたとしても、相手の反応はこちらには見えない。
 私はむしろ、気楽な世界だった。
 私と同じように悩み、迷い、だからこそ私のブログに辿り着いた人たち。
 でも、どこかで出会ったりはしない、とてつもない安心感。
 いっそ、実在する人間ではない、生成AIだったとしてもいい。
 現実では『言えない』私が、聞いてもらうことでこんなに心を軽くできるなんてーー。
 この気づきのおかげで、日々の生活でも前向きになれた。
『臆病うさぎさん、まったく楽しみがないわけじゃないよね? ほんの少しでも心が躍った、そんな経験を思い出して』
『そうそう、そこから深く掘り下げてって。それが、あなたが興味を持てる分野ってこと』
『興味がある、やってみる、面白い、好き……そこから趣味が持てたら、うさぎちゃんの生活が変わるかもしれない』
 そんなコメントをきっかけに、私は今までの自分を振り返ってみた。
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