社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
「おい村重、落ち着けよ」
大村さんが止める手を振り解き、彼女は私の腕を掴んだ。
「きゃっ……」
「どうしてくれるの、社長印が押された公的書類よ? 見つからなかったら、あんただけじゃない、私の首も吹っ飛ぶわよっ」
「あ、あの……」
「おいおい、さっきからなんの騒ぎだよ」
執務室の真ん中まで移動しての大騒ぎに、光山さんが席を立ってやってきた。
新プロジェクトチームの他のメンバーも、心配そうに周りを囲んでいる。
光山さんが割って入ってきて、村重さんもちょっと怯んだ様子だ。
私の腕は放してくれたものの、険しい表情はそのままで腕組みをする。
「私が取りに行ってって頼んだ契約書、宇佐美さんが紛失したのよ」
虚勢を張るかのように、ぐんと胸を反らして言い捨てた。
「宇佐美さんが?」
光山さんは訝しく眉をひそめてから、真偽を問うように私に視線を落とした。
だけど私は、彼を見上げてわずかに首を傾けるしかできない。
「なにかの間違いじゃないか? 村重さん、ちゃんと探したの?」
私を信じてくれたのか、光山さんがそう訊ねる。
「探してないから大騒ぎになってるの!!」
冷静に確認された焦れたのか、村重さんはヒステリックに叫ぶ。
「村重って」
さすがに見かねたのか、大村さんが彼女を後ろに引っ張った。
そして、なにかのコピーを私の前に差し出してくる。
「これ。宇佐美さんが法務部で受け渡ししたところまでは、所在確認できてるんだ」
促されるようにして、私はコピー用紙を手に取った。
私がそれに目を落とすと、光山さんも私の手元を覗き込む。
見るまでもない。法務部の受付にある、書類の授受簿だ。
すでに村重さんが確認したのか、該当らしき行が黄色の蛍光ペンで囲ってある。
日付と、印鑑が二つ並んで押されている。
一つは法務部の担当者のもの。
もう一つは私のものだった。
大村さんが止める手を振り解き、彼女は私の腕を掴んだ。
「きゃっ……」
「どうしてくれるの、社長印が押された公的書類よ? 見つからなかったら、あんただけじゃない、私の首も吹っ飛ぶわよっ」
「あ、あの……」
「おいおい、さっきからなんの騒ぎだよ」
執務室の真ん中まで移動しての大騒ぎに、光山さんが席を立ってやってきた。
新プロジェクトチームの他のメンバーも、心配そうに周りを囲んでいる。
光山さんが割って入ってきて、村重さんもちょっと怯んだ様子だ。
私の腕は放してくれたものの、険しい表情はそのままで腕組みをする。
「私が取りに行ってって頼んだ契約書、宇佐美さんが紛失したのよ」
虚勢を張るかのように、ぐんと胸を反らして言い捨てた。
「宇佐美さんが?」
光山さんは訝しく眉をひそめてから、真偽を問うように私に視線を落とした。
だけど私は、彼を見上げてわずかに首を傾けるしかできない。
「なにかの間違いじゃないか? 村重さん、ちゃんと探したの?」
私を信じてくれたのか、光山さんがそう訊ねる。
「探してないから大騒ぎになってるの!!」
冷静に確認された焦れたのか、村重さんはヒステリックに叫ぶ。
「村重って」
さすがに見かねたのか、大村さんが彼女を後ろに引っ張った。
そして、なにかのコピーを私の前に差し出してくる。
「これ。宇佐美さんが法務部で受け渡ししたところまでは、所在確認できてるんだ」
促されるようにして、私はコピー用紙を手に取った。
私がそれに目を落とすと、光山さんも私の手元を覗き込む。
見るまでもない。法務部の受付にある、書類の授受簿だ。
すでに村重さんが確認したのか、該当らしき行が黄色の蛍光ペンで囲ってある。
日付と、印鑑が二つ並んで押されている。
一つは法務部の担当者のもの。
もう一つは私のものだった。