社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
 決意を固めたはいいけど、どうやって確かめればいいだろう。
 翌日、仕事をしながら、私は悶々と考え続けた。
 部長に直接聞くのが、一番手っ取り早い。
 でももしも私の思い違いだったら、逆に私がブログを書いていることをバラすことになる。
 ちょっと考えにくいけど、それで部長が私のブログに興味を持ってしまったり、実際に読みに来てしまったら元も子もない。
 最悪、部長以外の社内の人にまで知られるという、大惨事になるかもしれない。
 思い悩むあまり、私は時々仕事の手を止め、チラチラと部長席を窺ってしまう。
 こんなことをしても意味がない。
 仕事に集中できない自分を叱咤して、再び気を引き締める。
 なのにその十分後にはまた部長席を眺めている……午前中はその繰り返しだった。
「宇佐美さんどうしたの? なんか気になる?」
 午後三時を過ぎても仕事に身が入らずにいるのに気づかれたのか、光山さんが首を傾げて訊ねてきた。
 ギクッとして、私の心臓が飛び跳ねる。
「え……? え?」
 どうやって誤魔化そうか、私は頭をフル回転させたけど、光山さんはポンと手を打った。
「あ。もしかして、昨日のこと?」
「え?」
「村重さんなら心配ないよ。契約書はちゃんと見つかったし、部長が内々で収めてくれたらしい。ま、もちろん、部長からはかなり厳重に注意されたみたいだけど……って、あれ、そのことじゃなかった?」
 私の反応が薄かったからか、彼は訝しそうな顔をする。
 私は慌てて、ブンブン首を横に振った。
「い、いえ、そうです。そっか、それならよかった……」
 都合よく解釈してくれた彼に話を合わせ、気づかれないように肩を竦める。
「さすがだよな、湯浅部長。ま、俺個人としては、もう少し厳しい処分でもよかったと思うけど。村重さんは以前からちょいちょい問題ある人だし」
 光山さんはちょっとボヤき口調になって、再びパソコンに向き直った。
 私はぎこちなく笑うだけに留め、彼に倣って身体を正面に戻す。
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