社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―
私は黙ったままその言葉を受け取り、一度目を伏せる。
そして、少し土手を下り、河原に目を遣る部長の背中に、「でも」と切り出した。
「現実の、上司と部下という出会いだけじゃ、私はきっと、部長とこんな風に話すことはありませんでした」
部長の肩が、ピクリと反応を見せる。
「そもそも、人と上手く話せない私には、海外事業部トップの部長との会話なんて、ハードル高すぎます」
私が先を続けると、部長はデニムのポケットに指をかけて、上半身だけで振り返った。
私は彼から目を離さず、追いかけるように立ち上がった。
「私のブログを、部長が見つけてくれたから。お互い人に言えない悩みがある私たちだから、仮面で素顔を隠した出会い以外、あり得なかった。それでも出会えたこの事実を、私は大切にしたいです」
部長の心に届くよう、必死に語りかける。
胸に込み上げるものがあって、一瞬で言葉が詰まった。
それを振り切って、一生懸命彼に伝えようとする。
「今は仮面を外して、現実の中でこうしてちゃんと向き合ってる。このまま、これからもずっとずっと……」
色々な感情が溢れ返り、押し寄せてくる。
声が詰まり、ひくっと喉が鳴った。
頬骨の辺りが強張り、唇が震えてしまう。
それでも部長に最後まで伝えたい一心でーー。
「好き、です」
その一言に、全部を込めた。
私を見つめる部長の顔に、戸惑いが広がるのがわかる。
「行かないで、部長……」
一気に迫り上がってきた涙が私の視界を遮り、せっかく絞り出した声をのみ込む。
熱い雫が頬を伝うのを止められず、私は両手で顔を覆った。
ひくっひくっと、子供みたいにしゃくり上げてしまう自分が情けない。
部長のおかげで、少しは前に進める自分になれたのに。
こんな私じゃ、部長に手を伸ばせない。
こんな私のままじゃ……。
自分のくぐもった嗚咽の片隅で、サクッと芝を踏む微かな音がした。
私を囲む空気が揺れた、そんな感覚のすぐ後ーー。
「……っ……!?」
「俺が先に言うべき言葉だった」
すぐ額の先から降ってきた部長の声。
背中がふわりと包まれた、そう感じたのはほんの一瞬。
「俺も、君が好きだ」
そんな告白と同時に、私は力強い腕に抱きしめられていた。
そして、少し土手を下り、河原に目を遣る部長の背中に、「でも」と切り出した。
「現実の、上司と部下という出会いだけじゃ、私はきっと、部長とこんな風に話すことはありませんでした」
部長の肩が、ピクリと反応を見せる。
「そもそも、人と上手く話せない私には、海外事業部トップの部長との会話なんて、ハードル高すぎます」
私が先を続けると、部長はデニムのポケットに指をかけて、上半身だけで振り返った。
私は彼から目を離さず、追いかけるように立ち上がった。
「私のブログを、部長が見つけてくれたから。お互い人に言えない悩みがある私たちだから、仮面で素顔を隠した出会い以外、あり得なかった。それでも出会えたこの事実を、私は大切にしたいです」
部長の心に届くよう、必死に語りかける。
胸に込み上げるものがあって、一瞬で言葉が詰まった。
それを振り切って、一生懸命彼に伝えようとする。
「今は仮面を外して、現実の中でこうしてちゃんと向き合ってる。このまま、これからもずっとずっと……」
色々な感情が溢れ返り、押し寄せてくる。
声が詰まり、ひくっと喉が鳴った。
頬骨の辺りが強張り、唇が震えてしまう。
それでも部長に最後まで伝えたい一心でーー。
「好き、です」
その一言に、全部を込めた。
私を見つめる部長の顔に、戸惑いが広がるのがわかる。
「行かないで、部長……」
一気に迫り上がってきた涙が私の視界を遮り、せっかく絞り出した声をのみ込む。
熱い雫が頬を伝うのを止められず、私は両手で顔を覆った。
ひくっひくっと、子供みたいにしゃくり上げてしまう自分が情けない。
部長のおかげで、少しは前に進める自分になれたのに。
こんな私じゃ、部長に手を伸ばせない。
こんな私のままじゃ……。
自分のくぐもった嗚咽の片隅で、サクッと芝を踏む微かな音がした。
私を囲む空気が揺れた、そんな感覚のすぐ後ーー。
「……っ……!?」
「俺が先に言うべき言葉だった」
すぐ額の先から降ってきた部長の声。
背中がふわりと包まれた、そう感じたのはほんの一瞬。
「俺も、君が好きだ」
そんな告白と同時に、私は力強い腕に抱きしめられていた。