甘い生活  Casa al mare
私は、しばらくその言葉を咀嚼していた。

「清海さんってば⋯⋯また、私のことをからかってるの?」

「冗談で、こんなこと言わないよ」

キッパリ言い切られて、どうしていいのかわからなくなる。

とても嬉しいのに、あまりの急展開に、頭も心も伴わない。

「ごめん。こんなこと言ったら、やりにくくなるよね。今の言葉は忘れて」

「忘れられるわけないじゃない」

「申し訳ない」

「謝らないで!だって私、清海さんのことが好き⋯⋯だと思うから⋯⋯」

本心をさらけ出すと、

「だと思う、って⋯⋯」

「あ⋯⋯それは、恥ずかしいけど、この歳まで恋愛とは無縁だったから、これが恋だって言い切っていいのかわからなくて」

私がそう言うと、

「意外だね。こんなに可愛くて努力家なのに」

「買いかぶり過ぎよ⋯⋯そもそも、出会いもなかったんだけどね」
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