悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 正論すぎてなにも言い返せやしない。

「俺たちはもう少し互いを知ったほうがいいのでは?と思った。婚約を破棄する正当な事由があるのかどうか、確認するためにも」
「互いを知ったあとで、私がそれでも破棄したいと言ったら応じてくださいますか?」

 ふっと、楓はかすかに口元を緩めた。伏し目がちになると、彼の睫毛がびっくりするほど長いのだとよくわかる。

「そうだな。みっともなくすがりつくようなマネはしない」
「……わかりました」

 彼はNOだと言ったが、志桜が自由になれる可能性はまだゼロではないらしい。であれば、がんばってみるしかないだろう。

(絶対に婚約破棄してみせる!)

「というわけで、来週の土曜の夜は空けておいてくれないか?」
「え?」
「互いを知るために、一度くらいはデートをしてみるのも悪くないだろう」

 その冷めきった表情と〝デート〟という甘い単語があまりにもチグハグで、志桜の眉間のシワはますます深くなった。

(やっぱりなにか裏があるのでは?)

 志桜のそんな様子に楓ははてと首をかしげる。

「女性はデートに誘えば喜ぶものかと思っていたが……君はそうじゃないのか?」
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