白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
 ドアをノックする瞬間、いつか見た光景を思い出す。
 あの日は今日のように快晴ではなく、冷たい雨が降っていたっけ。

 父は散々私を罵ったあと、最後の自由をくれた。
 死に向かうという自由を……。

 どこかイラつく感情を、笑顔で隠す。
 大丈夫、今度は。
 私が奪う番だから。
 そう自分に言い聞かせ、ドアをノックして執務室へ入った。

「アンリエッタ、あの契約はどういうことだ!」

 父は私が入室するなり、開口一番に怒鳴り散らし書類を投げつけた。
 距離があったせいか書類はそのまま床に落ちる。

 私はそれを拾い上げ目を通しつつ、父の傍へ近寄った。
 
 父は相変わらず椅子から立とうともしない。
 一応、身分は私の方がずっと上だというのに、この態度。
 もっとも、この人にはそんなの関係ないものね。

 投げ捨てた書類には私が約束させたように、半永久的に地下清掃をうちが受け持つとされている。
 しかし契約者はこの商会ではなく、現商会長である私になっていた。

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