白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「とにかく家に帰らなきゃ。予定よりだいぶ遅くなってしまっているから、怒られちゃう」
「まずは俺の家に行こう! そこで治療してもらって、そのあとうちの馬車で送るよ。その時、俺が君の家の人に謝るから」
「……」

 まっすぐな瞳が私を覗き込む。
 きっと、彼の中でそれは正義であり償いなのだろう。

 だけど……。

「いいわ。大丈夫。一人で帰れるから」
「そんな足で歩けるわけないだろ!」

 慌てふためく彼から視線を外しながら、私は無理やり立ち上がった。

 痛いのを通り越し、もはや感覚すらない私の足。
 きっと酷いことになっているに違いない。
 でも私はその足から目を逸らし、歯を食いしばる。

「ほら、大丈夫でしょう」
「ほらって、すごい汗じゃないか」
「暑いからよ」

 本当は暑さなんて、全然感じられない。
 ただ感覚のない足に、自分の心臓が移動してしまったよう。

 足からドクドクと嫌な音だけが体に響いていた。

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