破滅エンドしかないモブの娘に転生してしまったけど、父があまりにも優男だったので案外悪くはない。
 いけないと思った瞬間、すでに体は池の中。
 六歳の身長では足など着かないほどそこは水深が深く、もがけばもがくほど水が体にまとわりつく。

 あれほどペラペラで嫌だと思っていたワンピースも、なぜか重たい。
 
 嫌だ。死にたくない。
 まだ、死にたくない。

 だけど息が出来ない体はただ沈んでいく。
 意識がなくなる寸前、大きな手が私の体を掴んだ。

「アイリーン! アイリーン、しっかりしなさい!」

 うっすらと目を開けると、私と同じ瞳の色をしたパパの顔が見える。
 こんなに取り乱したパパを見るのはいつぶりだろうか。

 ああ、ママが死んでしまった時くらいかもしれない。

「……パパ。メガネ濡れてる」

 なぜかそれがおかしくて、私は笑ってしまった。
 でもそれ以上に自分の体がどこまでも重く感じ、私は再び目を閉じる。

 私を抱きかかえたパパが、叫ぶ声を遠くで聞いた気がした。
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