破滅エンドしかないモブの娘に転生してしまったけど、父があまりにも優男だったので案外悪くはない。
 ずっと誰かが私の名前を呼んでいた。
 しかもあれほど水の中にいて冷たかった体は、だんだんと手から温かさを取り戻していく。

 ああ、そろそろ起きなきゃ。
 またお父さんに怒られちゃう。

 混濁する意識の中で、走馬灯のような過去を見た。

 父はある企業でエリートと呼ばれる営業マン。
 常にその成績は良いため、地位も高く、また人当たりの良さから会社では誰よりも慕われる存在だった。

 それが家に帰ると、一変した。
 家族には何よりも厳しく、常に罵倒し、気に食わないことがあると暴力すら振るうような人だった。

 私と母はいつも父という存在に怯えていた。
 でも、誰もそんな父の家での顔を信じてはくれない。

 そう。誰も助けてはくれない。
 いつしか父の怒りの矛先は、つき従う母よりも反抗的な私に向く様になった。

 進学先も父が指定したところ。
 そこでの成績が少しでも悪いと叱責され、たとえ成績が良かったとしてもまた難癖をつけられた。

 家では母の手伝いも父が指定した部活もこなした上で、寝る時間もないほど勉強をする。
 それで倒れると、自己管理が出来ていないとまた怒られる。

 ただ怒られるのならまだマシだ。
 ご飯を抜かれたり叩かれたり、それが私にはどうしても耐えられなかった。
 
 母は父の怒りが私に向く様になると、私から目を背けた。
 分からなくもない。
 だって、誰だって自分が一番かわいいのだから。

 でも助けて欲しかった。
 私を見て? 助けて? こんなにもこんなにも苦しいんだよ。
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