すこしずつ、恋をする。

雨上がりの迷い道

翌週の夜、私は仕事帰りに少し遠回りして、あのカフェへ向かった。窓際の席には悠が先に座っていて、コーヒーを静かにかき混ぜている。

「来てくれたんだ」
「うん、なんとなく…」

悠の微笑みは、いつも通り誠実で、胸に静かな安心を落としてくれる。
でも、カフェの扉が開くと、私の心はまたざわついた。蓮だ。

「偶然だね」
「ほんとだね」

蓮はフードを脱ぎ、濡れた髪を指でかき上げる。その仕草が、私の胸を小さく揺らす。

「ねぇ、少し一緒に歩かない?」

蓮が私に差し出した手に、思わず手を重ねそうになる。でも私は理性を思い出し、悠の視線に気づく。

「…ちょっと、待って」
「うん、わかってる」

悠は優しく微笑んだ。その温もりに、私は少しだけ救われる。

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