雨の闖入者 The Best BondS-2
*
エナ達が案内されたのは、食堂かと言いたくなるほどに広い部屋だった。
広いスペースを無駄にしているとしか思えない。
五十人位ならゆうに立食パーティーを楽しめそうな部屋だというのに、置かれているテーブルは十二人掛けのテーブルただ一つだったのだ。
しかも、それだけの大きさがあるテーブルであるにも関わらず、椅子は六脚しかない。
何せ急な訪問でしたので、との前置きを置いて準備された食事はさほど豪勢でも量が多かったわけでもなかったが、空腹は最高のスパイス。
とにかく無我夢中で胃袋に次から次へと詰め込んだ後、エナはようやく、はたと気付いた。
空腹で鈍っていた思考回路が戻ってきたのだ。
だが、エナが何か言うより早く、いつ切り出そうかと考えあぐねていた家主が口を開いた。
「それで、あのー……本題なのですが」
「ふぉんふぁい?」
ゼルが手を止めて問い返したが、口にはいったままの肉のせいで残念ながら言葉らしい言葉にはならなかった。
「はい、そうです。実は今……」
「ちょっと待って」
話し出そうとした家主を遮りエナが制した。
「ジスト」
普段なら決してジストに向けない類の極上の笑みで名を呼んだ。
そんな笑みにジストも全てを魅了するような笑みで応える。
「なあ………に?!」
エナの手元が動く。
ゼルが目を見開く。
ジストの笑顔が引き攣り、言葉尻が驚愕に上擦る。
ジストの頬骨のすぐ横を通り過ぎたナイフが床で音をたてた。
紙一重でかわさなければ、形の良い鼻の頭が見事に凹んで、ついでにいえば鼻血姿を曝していたことだろう。
「……ちっ」
避けられるだろうことはわかっていたが、エナはそれでも心底残念そうに舌打ちをした。
「エナちゃん?! 舌打ちする?! 普通そこで舌打ちする?!」
「つか、普通本気でナイフなんか投げるかっ?!」
少しピントのズレたジストの主張に、的確な主張を重ねたゼルの近くで状況を把握出来ないままオロオロした家主の男を安心させるようにラフが鳴いた。
その外見を裏切る鳴き声に更にうろたえる結果を招いただけだったが。
エナ達が案内されたのは、食堂かと言いたくなるほどに広い部屋だった。
広いスペースを無駄にしているとしか思えない。
五十人位ならゆうに立食パーティーを楽しめそうな部屋だというのに、置かれているテーブルは十二人掛けのテーブルただ一つだったのだ。
しかも、それだけの大きさがあるテーブルであるにも関わらず、椅子は六脚しかない。
何せ急な訪問でしたので、との前置きを置いて準備された食事はさほど豪勢でも量が多かったわけでもなかったが、空腹は最高のスパイス。
とにかく無我夢中で胃袋に次から次へと詰め込んだ後、エナはようやく、はたと気付いた。
空腹で鈍っていた思考回路が戻ってきたのだ。
だが、エナが何か言うより早く、いつ切り出そうかと考えあぐねていた家主が口を開いた。
「それで、あのー……本題なのですが」
「ふぉんふぁい?」
ゼルが手を止めて問い返したが、口にはいったままの肉のせいで残念ながら言葉らしい言葉にはならなかった。
「はい、そうです。実は今……」
「ちょっと待って」
話し出そうとした家主を遮りエナが制した。
「ジスト」
普段なら決してジストに向けない類の極上の笑みで名を呼んだ。
そんな笑みにジストも全てを魅了するような笑みで応える。
「なあ………に?!」
エナの手元が動く。
ゼルが目を見開く。
ジストの笑顔が引き攣り、言葉尻が驚愕に上擦る。
ジストの頬骨のすぐ横を通り過ぎたナイフが床で音をたてた。
紙一重でかわさなければ、形の良い鼻の頭が見事に凹んで、ついでにいえば鼻血姿を曝していたことだろう。
「……ちっ」
避けられるだろうことはわかっていたが、エナはそれでも心底残念そうに舌打ちをした。
「エナちゃん?! 舌打ちする?! 普通そこで舌打ちする?!」
「つか、普通本気でナイフなんか投げるかっ?!」
少しピントのズレたジストの主張に、的確な主張を重ねたゼルの近くで状況を把握出来ないままオロオロした家主の男を安心させるようにラフが鳴いた。
その外見を裏切る鳴き声に更にうろたえる結果を招いただけだったが。