船々恋々
「この近辺だと分からない。」
「可愛い物を一人で買うの恥ずかしいから、一緒に買いに付いて来てよ。」
「わかった。今度、見つけたら買ってくるね。」
トキ君との会話も終わりかと思った瞬間。
「ぶふっ。」
吹き出して、爆笑の木之下さんが後ろから登場。
「お疲れ様です。」
何故、笑っているか全く理解できず。
一応のお決まり挨拶の私。
木之下さんは笑いを堪え。
「トキ、現場に戻れ。電池待ちだろが。午後から検査が入っているのは知ってるっすよね。行け。」
言いながら、いつもの不機嫌。
上司モードに切り替わっていく。
その威圧感に、口答えせず去っていくトキ君の後姿。
「ホント、お前は大物っすね。俺は感動したっすよ。」
なんの嫌味なのか分からず。
後日、ちゃんとトキ君におそろいのハンカチを買ってきてあげた。
トキ君はとても喜んでいて、お金を出すと言うので。
その金額で、みんなへの差し入れになるものを買ってきてもらった。
そのやり取りを見ていた木之下さん。
「何で受け取らないっすか?」
そんなに不思議だろうか。
外に出るのが面倒くさくて、差し入れを買ってきてくれるなら楽できると思ったのは黙っておこう。
「お金を受け取るのって好きじゃないだよね。」
これも嘘じゃない。
「可愛げないっすね。それに、あいつは……いや、俺が言う事でもないっすね。てか、サボるな働け!」
一緒に会話してたのは、木之下だよね?
急な俺様ツン。
なんだ、この面白い人は。
「は~い。」
「返事は短くっすよ!」
「……はい。」
今日も事務所は平和でした。
END


