吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
♯11.デートのあとに。
翌日、深緋は白翔と並び、暗い館内をわくわくしながら歩いていた。
「白翔、見て! あれペンギンじゃない?」
透明の柵にへばり付くようにして下を見下ろすと、黒い塊が群れを成して泳いでいた。ペンギンのゾーンは大きなプールを上から見下ろせる吹き抜けの構造になっていて、深緋は我先にと下へ続く階段を降りた。
目の高さで優雅に泳ぐペンギンは、まるで魚みたいで、鳥類というのは嘘なんじゃないかと思いたくなる。水槽の外から見上げる水面は、彼らによって絶え間なくかき混ぜられ、天井から降り注ぐ光を四方八方に散らしている。
こうして水族館に来るのは、実のところ初めての経験だった。大きな水槽でゆっくりと泳ぐマンボウも、半透明の体でふわふわと舞うクラゲも、テレビの画面でしか見たことがない。
隣りに白翔が追いつく。手を繋いで笑みを浮かべると、彼も嬉しそうに笑う。
今日の水族館デートは、白翔が提案したことだった。昨夜、深緋の家から帰るとき、彼が玄関先で振り返って言ったのだ。「明日デートしない?」と。
今後の展望に思いわずらう自分を、元気付けようとしてくれている、その気持ちがわかるだけに、深緋は二つ返事でオーケーをした。
行き先を、暑さも凌げる水族館にしようと決めてくれたのも白翔だった。