吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 不快に顔をしかめる以外は深緋に変化はなく、白翔のように蒼白な顔で項垂れてはいない。

「やっぱり、俺のこと知ってたんだ?」

「……多少は」と呟き、口籠もる。

「前回二人に会ってからね、コレ(・・)にかかりっきりだったから会合(ミーティング)が遅れたんだぁ。ごめんね?」

 言いながら、織田が楽しそうな笑みを浮かべて鞄に写真を仕舞い、続けて白い封筒を出してきた。

「じゃあコレはどう? 実を言うと、こっちが正真正銘のサプライズ」

 うんざりした面持ちで、それでも渋々封筒を受け取った。正直、織田の悪趣味に付き合うつもりなどないんだけどな、と胸中で独りごちる。

「……白翔は見なくていいよ」と彼の背を撫でながら言い、深緋はそれを開封する。次もまた写真だ。指で摘んで引っ張り出した瞬間、「え」と表情が固まった。即座に石化したかのようだ。

 赤い唇が戦慄(わなな)き、震えた指先から写真が落ちた。深緋の様子を見て、織田が嬉しそうにクス、と笑う。

「サプライズ成功、だね」

 落とした写真を不安そうに拾い、白翔も確認する。目に捉えた瞬間、「え」と彼も呟いている。

「それ深緋ちゃんだよね? どういうマジックを使ったらそうなる(・・・・)の?」

 写真に映っていたのは、上限姿から十年老いた深緋だ。紺地レースの日傘を差しながら二十七歳の深緋が不安そうな目つきでこちらを見つめている。
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