吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 祖母は優しい笑みを見せ、人間になるという望みを叶えて欲しい、そう鼓舞してくれた。でも。正直今は何も考えられない。

 スグルくんが亡くなったことを引き金に、たった一人の肉親まで失おうとしているのに、深緋にはなにも出来ない。己の無力さにただただ打ちひしがれるだけ。

「深緋」

 白翔の優しい声に顔を上げる。彼がそばにしゃがんで背中をさすってくれた。下手に言葉で慰めようとしない白翔に、愛情を募らせた。

「っ白翔ぉ……!」

 深緋は彼の胸に顔を埋め、感情のままに泣き崩れた。頭や肩に触れる手に温かみを感じて、それがまた無性に涙を誘った。

 白翔にしがみ付いたままで、深緋は必死に頭を働かせた。

 何とかして、リリーさんを助ける方法は無いの? こうなったら本当になにもできないの??

 伝承通りなら、祖母はこのまま朽ち果てて死ぬ運命にある。

 でも、自分が知らないだけで、もしかしたら過去に例外だって有るかもしれない。恋を知ってもなお、生き続けている同族だっているかもしれない。

 そう考え始めたら、当てにならない推測を是が非でも確かめるべきだと思った。

 深緋は(はな)を啜り、泣くのをやめた。白翔の胸を押し返し、幾らか距離を空ける。大丈夫か、と言いたげに、白翔は若干潤んだ目で深緋の顔を覗き込んだ。

「白翔」
「うん?」
「明日の朝。もう一度女人の谷に行く」
「……え」
< 216 / 339 >

この作品をシェア

pagetop