吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 正門らしき石壁を抜けて、白翔と二人で足を踏み入れた。

 だだっ広い公園だった。実際に英くんが寝泊まりしていた公園かどうかはわからないが、綺麗に整備されていて清々しい。

 あちこちにベンチが置かれ、芝生があり、噴水からは美しい水しぶきが上がっている。気持ち程度の遊具も有った。

 そよ風に葉を揺らす木々が公園の隅に多数並んでいて、それぞれが地面に影を落とし、涼しげな印象を与えている。良い公園だな、と思った。

 ふと、鳩が寄り集まっている一角が有り、首を傾げる。

 見るとベンチに座った女性が鳩にパンくずを撒いていた。鍔の広い帽子をかぶり、黒を基調とした服を着ている。

「いい公園だな?」

 急に白翔から声を掛けられた。さっきまで思っていたことなので、「そうだね」と同意する。

 深緋たちは歩を進め、祖母を探すことに専念した。

 ちょうど鳩が群がる通りに来て、数羽が深緋たちに驚き、羽を広げて距離を取る。なんとなく悪いなと思い、ベンチの女性に目を向けると、相手も同じようにこちらを見ていた。

「……え」
「深緋。なんで……」

 ベンチに座って餌を撒いていたのは四十代の姿に変わった祖母だった。

 帽子の鍔が陰になっていたので遠目にはわからなかったが、目鼻立ちは間違いなく祖母だ。瞬間、じわりと目頭が熱くなった。

「リリーさんっ!」
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