吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

♯17.儀式進行と死の存在。


 指示された窪地に立ち尽くし、深緋はカムイさんの動きをジッと見つめた。決して声だけは出さないようにとギュッと下唇を歯で押さえる。

 儀式の始まりを告げた彼女は、先ず祭壇の上に置かれた三枚のお(ふだ)を手にした。

 それを両手の平に載せて誰かに献上するような格好で顔を伏せる。そのままブツブツと呪文らしきものを唱え始めた。言語は明らかに異国のもので、何と言っているのかは分からない。

 伏せた顔を上げたとき、お札を見据える目の色が、淡く灰色に変化しているのに気が付いた。

 あっと息を呑み、口を固く閉じた。お腹の前で両手を組んで儀式へ集中する。そうしていないとうっかり声を出してしまいそうだ。

 カムイさんの姿があまりにも神秘的で、神々しい。彼女は呪文を続けながらキャンドルに灯した火の上に高くお札を掲げて、三枚を順に祭壇へと並べた。

 一旦口を噤み、そばにある月桂樹の葉を一枚一枚お札の上に置いていく。

 そしてガラス容器に入った三種類の血液の内のひとつを手にし、蓋を開けた。深緋から見て一番左端の葉に数滴、血を落とした。

 人差し指と中指だけを立てた右手で血を載せた葉を指し示し、また呪文を口にする。

 先ほど開けたガラス容器の血に、葉の上に落とした血を移して混ぜ、呪文と共に軽く容器を振った。

 えっ!
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