吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 手元のカラーコーンの塊やバスケの得点表の周囲を怪訝に見ていると、ガラガラと倉庫の扉を閉める音がした。ここに閉じ込められる心配は無いが、密室にされるのは息が詰まる。

「すみません、まだ中にいます!」

 教師が戸締まりに来たのだと思い、慌てて立ち上がる。鉄製の扉を開けるため、取っ手を横に引いた。が、何かにつっかえた様子で、びくともしない。

「知ってるし」

 キャハハ、と女子の(わら)い声が扉の向こうから聞こえる。

「だから閉めてるんだろ、バァーカ!」

 声からして尾之上たちだ。いつもの四人組のグループ。

「ねぇ! 私のペンダント、どこに隠したの!?」
「知らねえよ、一生探してろ!」

 彼女たちの甲高い嗤い声が次第に遠ざかっていく。なのに扉は動かない。てっきり、扉が開かないように四人で押さえつけているだけかと思ったら、そうではないらしい。

 おそらくは扉の端に長い棒状の物をかませて、人為的な方法でロックしているのだろう。両手で目一杯引いても、ガタガタと音が鳴るだけで動く気配がない。

 ハァ、と重い嘆息がもれた。ペンダントを探すにしろ、ここに閉じ込められるのだけは勘弁してほしい。今日の分の吸血だってまだ済ませていないのに。

 スマホを使って学校に電話をかけようと思い立ち、床に置いた手提げを持ち上げるのだが。当のスマホは教室に置きっぱなしだった。思わず舌打ちがもれた。
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