吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 尾之上グループの一人、植田がたじろぎつつも、さっきまで手にしていた深緋の革靴からパッと手を離した。

 床に落ちた革靴を足で払い除けるように蹴っている。それらの行動を無視して、深緋は蹴られた靴を取りに足を出した。

 すのこの上を歩き、ちょうどゴミ箱の前に転がったそれを拾い上げる。片方は裏を向いていた。

「おまえのじゃなかったら誰の血なんだよ、適当言ってんじゃ、」
「白翔」

 尾之上の言葉に被せてその名を告げると、彼女たちは一様に動揺する素振りを見せた。深緋はその場で靴を履く。

「それ、白翔の血だよ。私から手紙を取り上げてね、差出人が誰かを確認しようとしたみたい。そしたら中に仕込まれたカッターの替刃で右手の人差し指切っちゃって。
 かわいそうに、あれじゃバスケに差し支えるよ」

 リーダー格の尾之上は悔しそうに顔を歪めるだけで、何も言えないみたいだ。その代わり、頬を紅潮させて唇をブルブルと震わせている。

「何で王子がおまえ宛の手紙を取り上げるんだよ!?」

 グループの一人、佐藤が深緋を睨んで(わめ)いた。

「わからないの? 私のことが好きだからだよ。もう告白もされたし、私も白翔が好きだから付き合うつもり。二学期からは邪魔しないでね?」

 そう啖呵を切って、余裕のある笑みを浮かべた。
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