吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
♯5.もはやペットにするしかミチはない。
こみ上げる涙が一旦引いたのを見計らい、一度女子トイレで顔を洗った。そしてまた昇降口へと向かう。とりあえず今は、早く帰らなければいけない、と。気持ちが急いていた。
再び靴箱付近に差し掛かったとき、甲高い嫌な笑い声が聞こえた。
「あはははっ、ざまあ! 朝比奈が怪我したならいい気味〜っ」
「てか、まだローファー置いてあるよ? 手ぇ怪我して保健室行ったんじゃん? どうする、隠す?」
「隠す隠す〜っ」
ウザ。
深緋は立ち止まり、遠目から彼女たちを睨んでいた。やっぱりあの手紙は尾之上たちの仕業だった。
数日前、深緋のロッカーからペンダントを盗み、体育館倉庫に閉じ込めるという嫌がらせをしてもなお、深緋をこうして追い詰めてくる。いつまでも黙ったままでやり返さないから、彼女たちの行動が過激になっていくのかもしれない。
チ、と舌打ちをもらし、尾之上たちの様子を黙って見ていた。
先ほど白翔が落とした手紙には彼の血が付いている。床に点在したものも白翔のもの。それを彼女たちは深緋のものだと勘違いしている。
「それ、私の血じゃないよ」
深緋は尾之上たちを順に見据えて、少しだけ声を張り上げた。四人が四人とも、げ、と言いたげに頬をひくつかせる。
「……は、はぁ!? おまえ、なに言って」
「てか、なんだよ、いきなり」