恋愛Sim★comp

俺はこの数日、何を得た?
擬似恋愛は、非情だ。

俺は、映画の制作発表に招かれた。
そこで、第三弾……君との実話が発表される。
そう、君との別れをそのままに……。
ごめん、君は物語だけでも幸せを願った。けど……俺は書けなかった。
感情の赴くまま……すべて、俺の気持ちを知って欲しかった。
心を注ぎだし、この世界から消える決意でいたんだ。
それなのに、君への想いが文字となって次から次に溢れて止まらない。
留まることを知らないんだ。止め方を知らない。
それが才能?いい加減にしてくれ……。
解放して欲しい。
この会見が終わったら、君に逢いに行く。
告白するから、すべてを忘れて恋を始めよう?
お願いだ。悲しい想いをさせた償いをさせて欲しい。
比名琴……君の代わりなんていないんだ。
俺の心は、この華やかな世界にない。
見える光も空しく、うつろう意識は準備された現実に連れ戻される。

「花束を受け取ってください。」
大きな花束、渡す女の子の声は聞こえるが姿が見えないほどだ。
花を手に取り、傾けたそこに……君はいた。
花束が音もなく地面に落ち……俺は君を抱きしめた。
夢ではなく、俺の知らない結末をすべての人が見たんだ。

ガラス越しのキス。別れるシーン。
本当は、物語のために仕組まれていた。
「たまには、夢を試してみるのもいい?」
「準備された恋愛要素も、甘酸っぱいのね。ありきたり過ぎて、泣いたわ。」
君は涙目で笑う。
周りの音も消え、俺たちの物語の結末は公のキス。
「比名琴、俺と付き合ってください。」
「はい。よろしくお願いします。」
恋愛物語が始まる。本物の……

俺は、比名琴の手を取って会場を走り人をかき分ける。
この手は、俺の彼女の手。
大きなホテルを抜け、大きな道を走り小道を抜ける。
スピードを落とし、君を見つめ走る。
息を切らした君に、足を止めて抱きしめる。
「ね、その服可愛い。パーティードレスだよね?いつから知っていたの?俺、死にそうだったのに。携帯も繋がらないし……比名琴……比名……」
一気に言いたいことを述べていく。
足りないけど、腕にいる君に満足したんだ。
温かい。息を切らして、俺に重みをかける。俺に委ねるその信頼が、胸を熱くする。
感情に限界が無い。俺の頭に浮かぶ言葉は、すべて君に捧ぐ。
受け入れてくれる君にすべてを語る。
覚悟して?俺たちは、普通の恋愛では無い。
言葉で君をいつも酔わせてあげる。

「愛している」




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