恋愛Sim★comp

比名琴は、今の俺の世界。現実に色を付け、文字を体感させる。
文字は言葉となり、声となり……君に伝わる。
その反応が、俺を一喜一憂させるのだ。現実は、美しく残酷。
「比名琴?俺、してみたいことがあるんだ。」
俺の笑顔に、可愛く首を傾げ紙パックのミルクティーを吸う。
潤んだ唇が、美味しそう……
「俺、お姫様抱っこをしてみたい。後ね……」
【ブッ!!】
……。
「けほけほけホッ」
むせて、必死の君を観察してメモを取る。
心配をするのが後回しだった。
「大丈夫?コト!」
「けほっ……ごほごほっ。ゴメ、拭いて!!」
机は飲み物だけ。
シュウちゃんが、ウェットティッシュで手際よく拭いた。
落ち着いた比名琴と、一緒だったメンバーの視線が俺に集まる。
……?
不思議そうな顔をした俺に、みんなが一斉にため息。
何故だ??
目を輝かせた鷹木 文一(たかぎ ふみと)ちゃんが、興奮して叫んだ。
「いやぁ~~ん!!私も、言われたぁ~~い!!」
耳を押さえ、理解できずキョトンとしてしまう。
三ツ森 柊規(みつもり しゅうき)……シュウちゃんは、顔が真っ赤。
トラは、また爆笑。比名琴は、怒っている?
何故?許可を取っただけだ。
……?
お姫様抱っこは、しては駄目?許可が要らない?
誰も説明をしないからか、トラが口を開く。
「こほっん。幾久……お姫様抱っこは、普通じゃない。」
そう真面目に言ったかと思ったら、また爆笑。
ムカッ!!
普通じゃない?何故だ?漫画には出てくるぞ?
「あぁ!比名琴、倒れてくれ?」
お願いを間違えたのかと思ったのに……
「幾久……いつ倒れるかは分からないけど、そっとしておいてね?」
問題が違うみたいだ。
理解できない“普通”に苦しむ。
「ぷっ……お姫様抱っこ……くっ……あははははあはは!!」
何でだ?
俺の眉間のシワが治まらないのを、比名琴が押さえる。
「くすっ、可愛い。」
自然に出た比名琴の言葉に、嬉しくて微笑んだ。
他の三人は、顔を真っ赤に立ち上がる。
「普通じゃないわ。」
「うん。コトが、壊れた!」
「何かのウイルスかもね……」と、俺たちから離れていく。
目線を合わさず、急に何だ?
「……幾久、恋愛の小説以外も読んだ方が良いわよ?」
「読んでるよ?いろんなウンチク……」
比名琴は、口を開け……閉じた。
「……普通か。ちょっと待ってね……」
教室を見渡す。ま、確かにお姫様抱っこは無い。
一緒にお弁当を食べ、膝の上に彼女を乗せ……頬に触れたりイチャイチャ……
え?いいの?俺、こんなことしてもOK?
俺の視線や、考えを読み取った比名琴は、冷たい低い声で言う。
「アレは、しないわよ?」
視線を戻し、比名琴に訴える眼を向けた。
「……ぐっ。……周りが見えなくなるには、まだ……その……」
ふっ。幸せだ……
「比名琴、好きだよ……」


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