恋愛Sim★comp

すっかり日も暮れて、俺たちは監督が送ってくれるという申し出を丁重に断った。
「くふふ……真っ直ぐ帰れよ?送り狼になるなよ~~」
比名琴が、顔を真っ赤に視線を逸らした。
余計な言葉を……この後、気まずいのはゴメンだよ?
玄関で、監督と別れ……夜桜の下を通る。
少ない外灯に、満開の桜が潔く散っていく吹雪。幻想的な景色に包まれる。
まるで、ここは夢だ。比名琴が、いつも以上に色っぽく見える。
やばい……送り狼に変身しそうだ。
襲いたい……勢いよく飛びついて、押し倒して……あの甘い唇に……
俺の考えをお見通しなのか、俺に視線を向けた比名琴の顔が引きつっている。
「へへ?」
誤魔化して、ぎこちなく笑ってみる。
「……ふふっ……」
ぎこちない笑顔が返ってきた。
不思議に思う……いつも、俺の邪な想像を察知するのはどうしてかな?
口に出してはいない。視線は向けていたけど、比名琴は桜を見ていた。
気になる……どうせ、筒抜けなら訊いてみよう。
「比名琴、俺がHな気分のとき……どうして分かるの?」
俺の質問に、真っ赤になって歩調が乱れる。
動揺をしているようです。あれ?本当は、何かを感じるだけで比名琴に確信は無い?
しまった!墓穴を掘りました!!
まずい……何とか、誤魔化さないと!!
「くすっ。ぷぷぷ……あはははははは!!」
比名琴は、「我慢できない」と噴出し、爆笑。
何が、そんなにおかしいのかな?
確かに、墓穴を掘ったけど。怒られるより、ショックなのは何故??
「ん~~。ある漫画で見たよ?女の子が、自分の身に何か危機感を感じる能力があるとか?」
何て、彼氏には迷惑な能力だろう。
それにしても、授業中……君の斜め後ろの男に気がついていなかったよね?
完全ではないらしい。うん。奴の話は、俺が損した気分になるから黙っていよう。
「で、危機感を感じて……その反応は酷くない?」
何か、イラついてきだした。
「え?え~~、それは……まだ、私の心の準備が……あぁ!!今のなし!!忘れて!」
え……心の……準備?て、つまり……
「マジ?!」
思わず、詰め寄った。
「……何が?何のこと?あぁ!ほら、綺麗な桜吹……雪……んっ……」
唇に吸い付いた。
俺の触れる準備が、君にある。しているんだ……
嬉しさに、理性は消えうせて……想いのまま、唇を味わう。
角度を変え、深く……ついばむように……何度も何度も……
君は、それに応える。
比名琴……

息が切れ、君の頬は紅葉した葉のように染まり……目が涙で潤む。
「本当は、舌を入れてみたかった……」
本音をぶつけた。
沢山のキスをしたけど、我慢したんだと知って欲しくて……幻滅するかな?
「……ん……また、ね?」
口元を押さえ、微笑んだ。
【きゅぅ~~んん!!】
何、この可愛い生き物は!!保護しないと!俺から護らないと!!危険ですよ!!
畜生……汚すのは、俺か?けど、触れたい……
比名琴に、その準備……
【ブッ……】
妄想が過ぎましたか?情けなくなる。
鼻血に、俺たちは大騒ぎ。
こんな惨めな気持ちも、君と味わうなら……消えない思い出と未来のために、嬉しく思おう。
愛しさと切なさと……惨めで稚拙な……
貪欲な俺を……君が受け止めてくれるから……
溢れる言葉を……受け取って……


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