恋愛Sim★comp
「幾久……最近、あなたの言葉を聞いていない。」
「え?くすっ。少なくしてるだけだよ?」
俺を見透かしたように見つめ、読み取って睨む。
けど、言葉は優しい。
「気持ちが追いついたわ。すべて、吐き出して。私が足りないの……欲しい。あなたの言葉を聴きたい。聞かせて欲しい。幾久……こんな風に、あなたがした。責任、取って……ね?名を呼んで……」
俺たちの恋愛は、やっぱり普通じゃない。
何かを感じ、経験する度に思う。
「比名琴……比名琴……君を、解放したほうがいいのかな?俺が捕らえ、君を狂わした?君は、もっと自由な女性だったはずだ。」
「今の私は、嫌い?」
「違う。……俺の言葉の世界が、現実に通用しない。言葉をどう表現していいか分からない。作品は、留め処なく文字が並ぶのに……」
桜の木の下。風に負けて落ちる大量の花びら……それらが、周りの景色をピンク色に染める。
他の景色は見えない。目に映るのは、同じように俺を映す比名琴だけ。
時が止まる一瞬。静かな世界。
時を止めて……永遠に、続くことを願う……
「比名琴。好きだ……愛している。」
「うん。私も、好きよ。……愛しているわ。私を離さないで。」
俺の腕に抱きしめる。
「心も、あなたに囚われ放れない。……幾久……」
【ビュウ!】突風に我に返った。
ここは、公園。そして……トラと文一ちゃんがいた。
固まった俺たちは、ゆっくり周りの様子を見る。
嫌な視線……池の向こうから、二人がデジカメと携帯を向け……ニヤニヤと手を振った。
空気を読めよ!!
二人は、笑いながら俺たち2人の見ている前でキスをした。長い……
遠いから分からないが……何か、負けた気がする。
はぁ……ため息が出た。
視線を戻すと、比名琴は冷たい視線で見ていた。
……。
公衆の面前チュウは駄目ですか?
俺の視線に気づき、苦笑い。
「ね、比名琴。……手をつなぎたいな」
俺には、試してみたいことがあった。
「うん。はい……」
握手みたいに、軽く出された手。
俺は、その手の平をなぞるように指を滑らす。