恋愛Sim★comp

比名琴は、幸せそうに微笑む。
「……私も幸せ。嬉しい……好き……大好き……へへっ。」
照れ隠しに、君はお弁当に目を向けおかずの話を始める。
……うん、まだいい。このままで十分幸せだ。これ以上望むなんて、贅沢すぎる。
時間は、いっぱいある。
俺達の始まりは、別れだった。何かがあっても、対応できる気がする。
普通の恋愛じゃない始まりだから……

「ご馳走様でした。」
「お粗末様です♪」
俺は、そっと……比名琴の肩に頭をのせた。
中庭に、人影があるけど拒絶が無い。
「ふふ……甘えてるの?」
「……うん。心地いい……比名琴の香りがする。髪かな?……甘い匂いがする。美味しそう……」
【ビクッ】
……。
過剰な反応が、確かにあった。
お互いに、何かを感じたが……あえて、触れなかった。
沈黙……

こんなので、明日からの旅行は大丈夫なんだろうか?
今、その話題は避けよう。放課後、帰り道で……遠まわしに流れを持っていこう。
……。
比名琴は、今……何を考えてるのかな?
本当は知りたいんだけど……訊く勇気が無い。

文字の世界は、楽でいい。綴れば簡単に物事が進む、都合のいいように。
これは現実。相手の心は分からない。もどかしい……


飛行機は、初体験だった。
飛び立つ前の宙に浮く感じが、何とも言えない。
隣に、小さな窓。そして、席の隣は……
「嶋関さん、どうして俺と比名琴の間なの?編集長は、どこにいるの?」
イライラが募る。
高いところが苦手と、通路側に比名琴。可愛く目を、ぎゅっと瞑って……震えてる。
あぁ、手を握って抱きしめてあげたい。
な・の・に!!“使えない”!
俺が睨んでいるのに……質問もしたのに!!聞いていない!
「幾久くん、楽しいね!あ、お菓子食べますか?機内持ち込みの鞄は、すべてお菓子ですよ?」
……だと?!訊いてないから、そんなこと!!……こいつ、絶対に次作品で使ってやる。
いや、もう路線変更でサスペンスかホラーで消すか?
「くくく……」
俺の笑みに、最高のとぼけた微笑を返す。


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