恋愛Sim★comp

「幾久……現実は、辛いかもしれないぞ?その覚悟はしておけ。」
この言葉を、もっと真剣に考えていたら……。
俺たちは、何かが変わっていたかな?
君を苦しめるのは、俺だ。
そして、俺自身をも。切り刻まれるような痛みを知る。
俺たちは、普通の恋愛を赦されなかった。
君に触れることさえ、言葉を交わすことさえ赦されず……別れの時が来る。
切ない……

「幾久くん!来ちゃった♪」
……。
校門に、大勢の男に囲まれた三人組の女の子。
その中に、ヒナキが手を合わせて謝る姿。あぁ、友達なんだ。
これも、一つの体験だ。俺とトラのおまけが付いた5人でファミレスに入る。
「どうも、はじめまして♪」
聞いていた女の子だと、すぐに分かった。
この明るいよく話す子に「文一ちゃんだね?」と話しかける。
物凄く嬉しそうに目を輝かせ、テンションが上がる。
うん、間違いない。
「ヒナキ、私のこと話したの?」
「うん。うるさいのが文一で、静かなのがシュウだって♪」
それを聴いて、テンションがた落ち。
聞いていた通りの反応に、おかしくて笑った。
「安心したよ。ヒナキちゃん?俺、トラ。十代田 彪(とよだ とら)で、こいつの唯一の友達♪よろしくね。」
“唯一”に、3人が笑った。
「いや、こいつ癖があるから!俺以外に、友達いないの。警戒心が強すぎて、気を許せない?許さない?だっけ?」
トラは、この場を盛り上げるのが上手で助かった。

世界が広がる。現実の世界。
部屋にいては見えない世界。限界の無い経験。
小説は、順調だった。長期連載が決定し、注目され始めた。
夢から現実へ、成長の作品と……

小説の登場人物は、現実を見る。夢のような台詞は吐かない。
君と出会い。君に惹かれる。君を知って、君が俺に話しかける。
相手がいることの難しさ……違う人間、考え方……今更、意識する。
ヒナキ……比名琴……君の名を何度呼んだ?
欲が出る。君が、俺の名を呼ぶたびに……心が触れ合えたと感じたら……。
とうとう、触れたいと思うようになったんだ。貪欲。

夢に見る。君を汚す夢も見る。君は、俺を軽蔑する?
君に、言えるはずが無い。言葉を呑み込んで、悲しみの笑顔。
つられた君が、同じように悲しそうな笑顔を返す。
愛しい。何て、現実は美しく残酷なんだろう。
恋愛に憧れ、恋焦がれ。願いはどこまでも果てしなく。君を手に入れたい。
俺の望みは、誰しもが望むもの。
普通の恋愛、赦されない想い。


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