Dearest My Lady
「逆に俺は……なんだか落ち着かないよ」
「え?」
「幸せすぎてさ。ずっと好きだった紬ちゃんが、これから本当に俺の奥さんになってくれるんだって思うと……夢なんじゃないかって。朝起きて、全部消えてたらどうしようって」
照れたように言いながらも、声には隠しきれない本気が滲んでいる。
「だから今日は、あんまり眠れないかも」
眉を下げて困ったように笑う央に、紬はそっと顔を寄せた。指先で彼の頬に触れると自然と視線が絡み、吐息が触れ合うほどの距離になる。
「……大丈夫だよ」
その一言で、胸に残っていた不安の名残が静かに溶けていく。
「全部、現実だよ。これからもずっと一緒。……なっちゃんが、そう言ってくれたんでしょう?」
一瞬、央は言葉を失った。けれどすぐ、胸に込み上げるものに押されるように小さく声を漏らす。
「……それ、反則」
「ん?」
「可愛すぎ。明日は早いし大変だから我慢しなきゃって思ってるのに……止まらなくなりそう」
そう言って、央は一瞬だけ視線を揺らす。それでも結局、紬から目を逸らすことはできなかった。
「ね、紬ちゃん」
「……ん?なあに?」
「キスは……してもいい?」
それ以上はしない、と言外に含ませた、甘くて優しい問いかけ。紬は答えの代わりに、そっと目を閉じる。
静かなリビングで、間接照明の光に包まれながら、ふたりは明日へと続く時間を確かめ合うように、ゆっくりと距離を縮めていった。