この恋を執着愛と呼んでしまえば。
しかし、護くんはまるでその私の感情すら見透かすように言葉を続ける。

「っていうのもあるんだけど、今度から俺が担当になる営業先の人に来週挨拶に行くんだ。その人が隣町の和菓子屋が好きで持って行きたいんだけど、俺はあんまり和菓子にもここら辺にも詳しくないから教えて欲しいなって」

そして、護くんが明かした営業先はうちの会社のお得意様だった。

そして護くんは続ける。

「もちろん前の担当に好みは確認しておく。多分お昼に集合すれば14時には解散出来ると思うよ」

会うのは昼、わずか二時間という時間、仕事に関係のある話、昔の知り合い、「それくらいなら良いか」と思ってしまった。

「うん、良いよ」

「やった!」

まるで小学生の時のように無邪気に喜ぶ護くんは、昔のままのように見えた。

「じゃあ、今週の土曜日で良い?」

「うん」

「ありがと、想代。楽しみにしてる」


少しだけいつもと違う土曜日が始まろうとしていた。
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