この恋を執着愛と呼んでしまえば。
「うーん、たまに残業しちゃうけど……まぁ楽しいから大丈夫!」

「……」

「護くん?」

「いや、何でもない。なら良かった」

その時の少しだけ暗さを帯びた瞳に気づいていたのに、人はたった一つの違和感では見てみないフリをしてしまう。

いや、違和感を見逃したのはもう二つの大きな要因がある。


一つは、この後すぐに護くんが仕事に戻ったこと。

もう一つは、護くんの帰り際の笑顔がどこか安心出来たから。


だから、私は何故護くんまで会社に残っていたのかすら考えなかったのだろう。



でも、この瞬間から物語は動き始めた。

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