凛々しき王女の求婚

3

 森の中を全速力で走っている。
 それまでコナンは馬で走ることに自信があったが、目の前を走るエミリアの技術には正直舌を巻いた。

(なんでこんなことに)

 一人で気晴らしに出るはずだった為、はじめはそう考えていたものの、すぐにそんな余裕はなくなった。目の前を走る彼女を追いかけるので精一杯だったからだ。
 文字通り人馬一体ともいえるような走り。普段自分についてこられる人のほうが皆無なのに、今はついて行くことで精いっぱいなんて!


「さすがコナンだね」

 湖のほとりで止まった彼女は面白そうに目を輝かせて、ヒラリと馬から降りた。そのまま木に手綱を結ぶと、川の水を飲み始める彼女の愛馬を愛おしそうに撫でる。
 そのあまりにも優しい手に見惚れたコナンは図らずもドギマギとしてしまい、慌てて目をそらしながら自分も馬から降りた。

「殿下は乗馬がお上手なのですね」

 ぼそりと呟くように言うと、エミリアはくすぐったそうにくすくすと笑った。
 それは舞踏会でよく聞くようなものとは違い、
(心の底から楽しそうだな)

 眩しいものを見るように目を細める。事実陽の光を背にしたエミリアは、光をまとったように輝いて見えた。

 若い女性にしては飾り気のない髪が少しほつれている。彼女が湖を見ながら髪をかき上げ、小さく息を吐いた。
 先ほどまで感じていたものとは少し違う雰囲気に、コナンは内心首を傾げる。
 まるで少女のような甘い空気。
 バラ色の頬は柔らかそうで、思わず手で触れてみたくなる。

「コナンは、弟の家庭教師をしてくれるんだろう」

 ふいにそう言って振り向いたエミリアに、伸ばしかけていた手を慌てておろした。

(僕はいったい何を)
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