凛々しき王女の求婚

4

 ごまかすように咳払いの真似をし、生真面目な顔を作る。もしかしたら、彼女は結婚のことは何も聞いてないし、気付いてもいないのでは、と思ったのだ。

「ええ、その通りです」
「オズワルドとは気が合いそうかい?」

 イタズラっぽい表情に、ついコナンの表情も緩んだ。
 その表情は世間の噂とは違い、弟が可愛くて仕方ないと言っている。

「そう思ってますよ。エミリア殿下はオズワルド君を気にいってらっしゃるようですね」

 コナンもいたずらっぽく片眉をあげて見せると、エミリアは嬉しそうににっこりと笑った。その美しい笑顔に、ドクンと心臓が大きく脈打つ。

「可愛い弟だからね。ああ、大好きだよ」

 世間では、妃亡き後新たに妻をめとらなかった王が、庶民との間に子を設けていたことを面白おかしく噂していた。エミリア王女が、その異母弟を疎ましく思っているとも。
 事実オズワルドは瞳や髪の色の印象のせいで、かなり可愛げのない感じがする子供だ。

 でもさっき厩舎に来る途中、エミリアが弟をからかい笑い合っているところを偶然目にしていた。ごく普通の仲の良い姉弟だ。

「私は弟を守りたいと常々考えているんだ。剣術や馬術は教えることが出来るが、あの子は賢い。知識を武器にできる子だと考えている。コナンがその力になってくれるなら、とても嬉しいな」

 母上の身分が低いため、いわれのない中傷を受けているからとの言葉に、コナンは首をかしげる。自分が知っている情報との齟齬に戸惑っていると、エミリアは「ああ」と頷いた。

「あなたは、父の再婚をよく思わない輩の噂のほうを知っているのだね」

「ご結婚されていたのですね」

 思わず口に出し、ハッと抑える。これは完全な失言だ。

「コナンは、私の今の母上にも以前会ってると思うけど?」

 面白そうにそう言われ記憶をたどる。
 前回エミリアは誰といたか。

「もしや、幼子を抱いていた女性がそうでしたか」
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