妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
* * * *

 夕食は北斗が頼んだデリバリーのピザを二人で食べた。先ほどまで何度もベッドで愛し合い、すでにお腹はぺこぺこだった。

 食べている間も、北斗が熱い視線を送ってくるので、花梨はくすぐったい気持ちになって思わず視線を逸らす。しかしそれすらも北斗の目には可愛いく映るようで、急に抱きしめられて食が進まないという事態が何度も起こった。

 それから一緒に入りたいという北斗を静止し、一人でシャワーを浴びた後、着替えを済ませた花梨は彼の運転する車に乗り込んだ。

「一人でも帰れるのに……」
「こんな時間に一人で帰すなんて出来るわけないだろ。まぁ本当は泊まっていってほしいんだけど」
「私も一緒にいたいけど、明日も仕事だし……」
「わかってるけど、やっぱり離れるのが寂しいんだ。だからもう少しだけ一緒にいさせてよ」

 そんなことを言われてしまうと、花梨に断る理由はなくなってしまう。でもここまでストレートに言われると、不安を感じたり疑う余地もなく、ただ素直に嬉しいと思い自分がいた。

 家の前に車が止まると、北斗に手を握られキスをされる。花梨にとっては今日が人生で二回目のキスだった。しかし何回もしたからか、自然と受け入れてしまう。

「花梨、次の休みはいつ?」
「えっと……土曜日が休みだよ。どうして?」
「俺も土曜日が休みで、金曜日は日勤で帰れる日なんだ。だから……夕食を一緒にどうかな? 例えばだけど、夕食を食べてからうちにお泊まりとか」
「たぶん大丈夫だと思うけど……お泊まりしちゃうの? あの、そ、それって──」
「下心? ないと言えば嘘になるけど、花梨が嫌ならしないよ」
「そんなはっきり言っちゃうなんて、素直すぎだよ……」
「花梨に嘘はつきたくないからね。待ち合わせはどうしようか」
「北斗くんの家、病院の近くだよね。私が病院の近くで待っていようか?」
「じゃあそうしてもらおうかな……」

 北斗が名残惜しそうに花梨の頬を撫でたので、その心地よさに体の力が抜けそうになった。キスの終わらせ方がわからずにいると、ようやく北斗が自分の唇を噛み締めながら離れた。

「このまま花梨を連れて帰りたい」
「また金曜日に会えるから……。私も北斗くんに会えるのを楽しみにしてるね」
「俺が花梨を困らせてるのはわかってるんだけど──」
「困ってるのは私も同じ理由だからだよ」

 花梨は北斗をギュッと抱きしめてから、彼の顔を見ないように助手席から降りる。そうしないと、一生降りられない気がした。

「また連絡するね」
「俺からもするよ」
「うん、じゃあまたね」

 花梨は北斗に手を振り歩き出した。こんな気持ちになる日が来るなんて、彼と再会したばかりの頃の花梨は想像もしなかった。

 振り返って、車の中から手を振る北斗に笑いかけると、幸せな気分のままマンションのエントランスまで駆けて行った。
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