妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
* * * *
平日ということもあり、観覧客はそこまで多くはなかった。特に午前中は展示を見に行く人が多いため、まだミュージアムショップに混雑は見られない。
商品をきれいに並べたり、少なくなったものを補充していた時だった。
「うわぁ! ばったくんだー!」
背後から男の子の大きな声が聞こえてきたのだ。
驚いて振り返った花梨は、目の前に広がる光景を目にして、思わずクスッと笑ってしまう。
年長児くらいの男の子が、ばったくんのグッズの前で瞳を輝かせていたのだ。
「ママ! あのおっきいぬいぐるみが欲しい!」
「ダーメ。せめて小さいのにしておきなさい」
「えーっ! やだやだやだ! こっちの大きいのが欲しい!」
親子のやり取りにほっこりとした気持ちになっていると、その男の子と目が合ってしまう。花梨が反射的に微笑みかけた時だった。
「あーっ!」
男の子は花梨を指差し、さらに瞳を輝かせたのだ。
「かりん先生だー!」
「えっ……」
職場で先生と呼ばれたことのなかった花梨は、驚いたように目を見開いた。すると花梨に気付いた母親が、慌てて近くにやって来る。
「急にすみません! まさか花梨先生にここで会えるなんて……。あの、この間の第一総合病院でのお話会に参加していたんです! 本当は退院してたからダメなんですけど、息子が好きだからって北斗先生が呼んでくれて……」
あのお話会に来てくれた子だったなんて──しかも自分の顔まで覚えてもらえていたことに、喜びのあまり涙が出そうになった。
「かりん先生のおはなし、オレだいすきなんだ! ほくと先生が教えてくれたってのもあるけど、でもでも、オレだってだいすきだし!」
熱い想いを伝えられ、花梨の胸は幸せでいっぱいになる。男の子と同じ目線にしゃがみ込むと、満面の笑みを向けた。
「本当? すごく嬉しいなぁ。ありがとう」
「ううん! でもやっぱりほくと先生が、かりん先生のことがいちばんだいすきだからさ。かりん先生、ほくと先生のことをすきになって、しあわせにしてあげてよ!」
「……う、うん、もちろん!」
一瞬言葉を失ったが、患者からこんなふうに慕われる北斗に、尊敬の念すら覚える。
「ほらほら、花梨先生のお仕事の邪魔はしちゃダメでしょ」
「えーっ! じゃあいちばんおっきいばったくんがいい!」
「ダメに決まってるでしょ!」
そのやり取りを眺めながら、頭には北斗の姿が浮かび上がる。彼と再会出来たことは、花梨にとっての大きな幸せだった。自分が彼を幸せにするなんて出来るだろか──でもいつか、二人で幸せになる日が来ることを願わずにはいられない。
北斗くんに会いたいな──彼の話を聞くたびに、自分の中の好きという感情が大きくなっていくのがわかった。
平日ということもあり、観覧客はそこまで多くはなかった。特に午前中は展示を見に行く人が多いため、まだミュージアムショップに混雑は見られない。
商品をきれいに並べたり、少なくなったものを補充していた時だった。
「うわぁ! ばったくんだー!」
背後から男の子の大きな声が聞こえてきたのだ。
驚いて振り返った花梨は、目の前に広がる光景を目にして、思わずクスッと笑ってしまう。
年長児くらいの男の子が、ばったくんのグッズの前で瞳を輝かせていたのだ。
「ママ! あのおっきいぬいぐるみが欲しい!」
「ダーメ。せめて小さいのにしておきなさい」
「えーっ! やだやだやだ! こっちの大きいのが欲しい!」
親子のやり取りにほっこりとした気持ちになっていると、その男の子と目が合ってしまう。花梨が反射的に微笑みかけた時だった。
「あーっ!」
男の子は花梨を指差し、さらに瞳を輝かせたのだ。
「かりん先生だー!」
「えっ……」
職場で先生と呼ばれたことのなかった花梨は、驚いたように目を見開いた。すると花梨に気付いた母親が、慌てて近くにやって来る。
「急にすみません! まさか花梨先生にここで会えるなんて……。あの、この間の第一総合病院でのお話会に参加していたんです! 本当は退院してたからダメなんですけど、息子が好きだからって北斗先生が呼んでくれて……」
あのお話会に来てくれた子だったなんて──しかも自分の顔まで覚えてもらえていたことに、喜びのあまり涙が出そうになった。
「かりん先生のおはなし、オレだいすきなんだ! ほくと先生が教えてくれたってのもあるけど、でもでも、オレだってだいすきだし!」
熱い想いを伝えられ、花梨の胸は幸せでいっぱいになる。男の子と同じ目線にしゃがみ込むと、満面の笑みを向けた。
「本当? すごく嬉しいなぁ。ありがとう」
「ううん! でもやっぱりほくと先生が、かりん先生のことがいちばんだいすきだからさ。かりん先生、ほくと先生のことをすきになって、しあわせにしてあげてよ!」
「……う、うん、もちろん!」
一瞬言葉を失ったが、患者からこんなふうに慕われる北斗に、尊敬の念すら覚える。
「ほらほら、花梨先生のお仕事の邪魔はしちゃダメでしょ」
「えーっ! じゃあいちばんおっきいばったくんがいい!」
「ダメに決まってるでしょ!」
そのやり取りを眺めながら、頭には北斗の姿が浮かび上がる。彼と再会出来たことは、花梨にとっての大きな幸せだった。自分が彼を幸せにするなんて出来るだろか──でもいつか、二人で幸せになる日が来ることを願わずにはいられない。
北斗くんに会いたいな──彼の話を聞くたびに、自分の中の好きという感情が大きくなっていくのがわかった。