妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
「そう。山之内さんが部室棟に入って来たのを見計らって、階段を登る時間を考慮しながら北斗を窓際に追いやってから、私からキスしたの。ちゃんとあなたに見せつけられたか不安だったけど、あれからずっと北斗を避けるし、傷付いたーみたいな顔して逃げ出してさ。成功したんだって思ったら、笑いが止まらなかったわ!」
青ざめる花梨に対して、愛佳はわざと腹を抱えて笑い出す。
「どうしてそんなこと……」
「はぁ? そんなの、あんたが邪魔だからに決まってるでしょ。北斗は昔から私に興味がなくて、親の関係上会話することはあっても、それ以上踏み込んでこなかった。それが何? あんたと知り合ってからは、まるで私なんていないものみたいに扱われたわ。だからあんたさえいなければ、北斗は私の存在を大きく感じるはず──そう思ってたのに、どうしてまた現れるわけ?」
愛佳はため息をつくと、目を細めて花梨を睨みつけた。
「しかも自分から避けておいて、今さら虫が良すぎるって思わない? 彼を傷つけたのはあなたよ? どうせまた自分勝手に勘違いして彼から逃げ出すのが落ちなんじゃない? それなら近寄らない方が、二人のためだと思うけど」
愛佳の口調は淡々としているが、鋭い刃のように花梨の心を傷付けていく。
自分が彼を傷付けた──そのことは彼と話して解決しているとはいえ、第三者に指摘されると、不安で押し潰されそうになる。
この先、確かにまた逃げ出してしまうことがあるかもしれない。そうなった時、自分はまた彼を傷付けてしまうのだろうか──その時、愛佳が近付いてくるのが目に入り、花梨は一歩退いて身構えた。
その様子を見た愛佳は、勝ち誇ったかのようにニヤリと笑ったのだ。
「北斗ね、手術の時に私が隣に立つとやりやすいんですって。わかる? あんたなんか必要ないの。どっちにしたって、あんたじゃ住む世界が違うのよ。だから──早く北斗の前からいなくなってよ」
体に震えが走った。怖くて仕方なくなって、愛佳の前から消えてしまいたかった。
花梨は何も口には出せず、その場から逃げるように走り去った。
青ざめる花梨に対して、愛佳はわざと腹を抱えて笑い出す。
「どうしてそんなこと……」
「はぁ? そんなの、あんたが邪魔だからに決まってるでしょ。北斗は昔から私に興味がなくて、親の関係上会話することはあっても、それ以上踏み込んでこなかった。それが何? あんたと知り合ってからは、まるで私なんていないものみたいに扱われたわ。だからあんたさえいなければ、北斗は私の存在を大きく感じるはず──そう思ってたのに、どうしてまた現れるわけ?」
愛佳はため息をつくと、目を細めて花梨を睨みつけた。
「しかも自分から避けておいて、今さら虫が良すぎるって思わない? 彼を傷つけたのはあなたよ? どうせまた自分勝手に勘違いして彼から逃げ出すのが落ちなんじゃない? それなら近寄らない方が、二人のためだと思うけど」
愛佳の口調は淡々としているが、鋭い刃のように花梨の心を傷付けていく。
自分が彼を傷付けた──そのことは彼と話して解決しているとはいえ、第三者に指摘されると、不安で押し潰されそうになる。
この先、確かにまた逃げ出してしまうことがあるかもしれない。そうなった時、自分はまた彼を傷付けてしまうのだろうか──その時、愛佳が近付いてくるのが目に入り、花梨は一歩退いて身構えた。
その様子を見た愛佳は、勝ち誇ったかのようにニヤリと笑ったのだ。
「北斗ね、手術の時に私が隣に立つとやりやすいんですって。わかる? あんたなんか必要ないの。どっちにしたって、あんたじゃ住む世界が違うのよ。だから──早く北斗の前からいなくなってよ」
体に震えが走った。怖くて仕方なくなって、愛佳の前から消えてしまいたかった。
花梨は何も口には出せず、その場から逃げるように走り去った。