妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
エレベーターが到着するまでの時間が、恐ろしく長く感じる。十五分前に病院を飛び出したのなら、もうこの近くにはいないかもしれない。駅まで十分、彼女の最寄り駅までは十五分だが、タクシーを使えばもう少し早く到着する。そもそも、花梨が家に帰ったことを確認することも出来ていないのに、無闇に動くのはどうだろう。
エレベーターで一階まで降りた北斗は、エントランスに愛佳がいることに気付いた。どうやら北斗を待っていたらしい愛佳は、不敵な笑みを浮かべて近寄って来る。
「あら、北斗も帰り? 偶然ねぇ」
しかし何があったかを知っている北斗は、ギロっと愛佳を睨みつけた。
「偶然じゃないだろ? 花梨はどこだ?」
「なんのこと?」
「とぼけるなよ。原田が花梨に詰め寄ったこと、知ってるんだからな」
愛佳は不愉快そうにため息をつくと、舌打ちをする。
「なーんだ、バレてたんだ」
「現場を見たって人がいるんだよ」
「ふーん。覗き見なんて失礼ね」
「そうじゃないだろ。彼女に一体何を言ったんだ」
「別に」
「別にって……!」
「山之内さん、なんか相当自信無くしたみたい。北斗の役に立てるのは自分じゃないって気付いたんじゃない? あなたも、昔が懐かしくなってるだけよ。あなたを支えるのは、やっぱり私しかいないと思うわ」
「……いい加減にしろよ。散々俺たちを傷つけておいて、
「あなたたちが勝手に傷付いただけでしょ? それこそ絆がどうのとか言い出すなら、私が介入したところで突っぱねて離れたりしないはずじゃない?」
「ふざけんな。自分の物差しだけで物事を考えるなよ。花梨は原田と違って純粋で繊細で真っ直ぐな子なんだ。花梨を傷つける奴は、俺は誰であろうと許さない」
北斗は愛佳の横を通り過ぎて、駐車場に向かって歩き始めた。
「仕事は真面目に取り組んでいるし、原田は変わったと思っていたのにな。ガッカリだよ。今後一切俺たちに関わらないでくれ」
「……ふんっ、人間、そんな簡単には変わらないわよ」
しかし愛佳の声は北斗には届くことはなかった。
エレベーターで一階まで降りた北斗は、エントランスに愛佳がいることに気付いた。どうやら北斗を待っていたらしい愛佳は、不敵な笑みを浮かべて近寄って来る。
「あら、北斗も帰り? 偶然ねぇ」
しかし何があったかを知っている北斗は、ギロっと愛佳を睨みつけた。
「偶然じゃないだろ? 花梨はどこだ?」
「なんのこと?」
「とぼけるなよ。原田が花梨に詰め寄ったこと、知ってるんだからな」
愛佳は不愉快そうにため息をつくと、舌打ちをする。
「なーんだ、バレてたんだ」
「現場を見たって人がいるんだよ」
「ふーん。覗き見なんて失礼ね」
「そうじゃないだろ。彼女に一体何を言ったんだ」
「別に」
「別にって……!」
「山之内さん、なんか相当自信無くしたみたい。北斗の役に立てるのは自分じゃないって気付いたんじゃない? あなたも、昔が懐かしくなってるだけよ。あなたを支えるのは、やっぱり私しかいないと思うわ」
「……いい加減にしろよ。散々俺たちを傷つけておいて、
「あなたたちが勝手に傷付いただけでしょ? それこそ絆がどうのとか言い出すなら、私が介入したところで突っぱねて離れたりしないはずじゃない?」
「ふざけんな。自分の物差しだけで物事を考えるなよ。花梨は原田と違って純粋で繊細で真っ直ぐな子なんだ。花梨を傷つける奴は、俺は誰であろうと許さない」
北斗は愛佳の横を通り過ぎて、駐車場に向かって歩き始めた。
「仕事は真面目に取り組んでいるし、原田は変わったと思っていたのにな。ガッカリだよ。今後一切俺たちに関わらないでくれ」
「……ふんっ、人間、そんな簡単には変わらないわよ」
しかし愛佳の声は北斗には届くことはなかった。