転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
果たしてそれでいいのだろうかという疑問が湧いてくる。
今回の騒動を解決した褒美が、アップルパイで相応しいのかと。
しかし他に選択肢もない。
というわけでクロウは、褒美として焼き立てのアップルパイを用意することにした。
そして褒美にするからには最高のアップルパイを食べさせてやろうと考える。
焼き立てということは、どこかの店で買ってきたものは含まれないだろう。
この屋敷で作ってすぐに提供してやるのが最善だ。
であれば、使用人に命じて最高級の食材を揃えてもらい、作らせるというのが安(あん)牌(ぱい)になる。
いや、なんだったら名高い腕利きのパティシエを呼んでアップルパイを作らせてもいい。
それだけ凝りに凝ったアップルパイならば、此度の成果に対する褒美としては妥当なものになるのではないだろうか。
(よし、それでいこう)
考えがまとまったクロウは、さっそく使用人を呼んで最高級の食材を集めさせようとする。
ついでに腕利きのパティシエの候補も挙げてもらおうとしたが……
「……」
不意にクロウは思い止(とど)まり、立ち上がろうとしていた体を椅子に戻した。
本当にそれでいいのだろうか。
使用人を使って食材を集めさせて、腕利きのパティシエを呼んでアップルパイを作らせる。
そんな風にすべて人任せにした品を送って、本当に感謝の意を示せていると言えるのだろうか。
自分が任されている領地の危機を救ってもらったのだぞ。
頭を抱えて悩んでいるところに手を差し伸べてもらったのだぞ。
その恩を他人を使って返すなんて、きっと間違っている。
なにより他の者が作ったアップルパイを食べて喜ぶアウルの姿を想像すると、気持ちが晴れるどころかむしろ心のもやもやがさらに増すような気が……
「……仕方ない」
クロウは自分が納得できる方法を思いつき、壁のフックにかけていた薄手のコートを取って執務室を出ていった。