転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
屋敷の使用人たちには外の空気を吸ってくると言って、クロウは屋敷を出た。
その足で領都の中心部へと向かい、食材が売っている大通りを目指す。
すべて人任せの品を送って、気が晴れないのだったら……
すべて自分でやった品を送ればいい。
自分で食材を揃えて、自分で調理をして、最後まで自分で完成させたアップルパイ。それを嬉しそうに頬張るアウルを想像すると、胸がじんわり温かくなってくる……
それを褒美の品にすれば納得できる。
幸いにもアップルパイの作り方ならば、執務室にあった料理本で一度見て覚えているから。
と考えたクロウは、まずは食材を集めるために露店が出揃う通りにやってきた。
屋敷で仕入れている食材の多くは、この露店通りのものである。
アウルが気に入ったというリンゴスイーツの材料も、おそらくここから調達したものだ。
できれば最高級の材料を揃えたかったところだが、自分ひとりでは集められる食材にも限界がある。
なによりアウル本人が気に入ったというリンゴスイーツの味は、ここの材料で作り上げられたものなのだからそれに則るのが一番の安牌だ。
そんな心持ちで露店が並ぶ通りに辿り着くと、周りから視線を送られることになった。
「クロウ様だ……」
「どうして露店通りなんかに……?」
「なにかの視察?」
血染めの貴公子と名高い領主様の登場に、自ずと露店通りに緊張が迸る。
新しくやってきた領主が、エグレット公爵家の神童であり、数々の戦績から血染めの貴公子と恐れられていることはすでに知れ渡っている。
そのため畏怖、疑念、焦燥、尊敬、それらの視線があちこちからクロウに注がれる。
しかしそんな視線に慣れている彼は、まるで動じることなく通りを歩いていき、やがて青果を取り扱う店を見つけて足を止めた。
黒髪頭で髭を蓄えた中年の店主が、クロウが来店したことで目をぎょっと見開く。
「クク、クロウ様!? なぜうちの店に……?」
「リンゴが欲しい。三つ四つ見繕ってくれ」
よもや血染めの貴公子が普通にリンゴを買いにきたとは思わなかったのだろう。
青果屋の店主はクロウの注文を受けてもすぐに理解できず、ポカンと固まってしまった。