あなたの1番になりたい。
「ーだだいま」
中から返事がする事はないと分かっているが、玄関のドアを開けると同時に呟く。
コーヒー1杯を飲んだ後、先輩と別れ帰路についた。
玄関を上がってすぐあるキッチンを通り抜け、もう1枚のドアを開けると、2人用の木目調の丸テーブルとベッドだけが置かれた無機質な部屋が現れ、2つある椅子の1つには、教科書やノート類が大量に積み重なっている。
手に持っている通学用鞄をボトッと落として、ベッドへ制服のままダイブして沈む。
「疲れた…」
1Kアパートの1室に小さな疲労した声が響く。
今日は色んな事がありすぎて
いつもより疲れたので目を閉じ、制服姿の伊吹さんを思い出す。
久しぶりの制服姿は本当に殺傷能力が高い。
高すぎる…。
見るだけで満足してたのに、あの人に大切な子が出来て初めて、自分にも独占欲があったのだと認識した。
認識したところで、もう遅いけど。
伊吹さんの弱った所に付け込みたい欲満載だけど、私の割り込むスペースは1ミリも無いことを今日、再認識させられた。
もどかしい この気持ちがいつか晴れる日は来るのだろうか、と思っているとブーブーとポケットへ入れていたスマホが震えた。
スマホを取り出し、メッセージを開くと
『入金しました。』と短い文で書かれており、上部には「父」という文字が表示されている。
「……」
スマホをボンッと掌からベッドへ投げ出し、身体を起こして体育座りした後、両膝の上へ頭を沈めた。
私を愛してくれる人など、この世にいないー。
暗闇の部屋でひとり寂しく思った。
