御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「お気持ちだけ受け取っておきます。……それでは」
くるりと体の向きを変え、副社長に背を向ける。そして数歩歩きだしたところだった。
「あ、待って芦屋さん」
「今度はなんですか?」
思わずきつめの声で応えながら振り向く。歩み寄ってきた副社長の手には、ベンチに置きっぱなしだった私のコーヒーのカップが。
「忘れ物。僕が飲んでもいいなら置いていっていいですけど」
彼がそう言いながらカップを口元へ持って行こうとするので、慌てて駆け寄って奪うように回収した。
冗談にしてもたちが悪い。そう思って彼を睨みつける。
「そんなに怒らなくても」
「怒りますよ。……基本的に男性不信なんです、私」
「男性不信?」
しまった。余計なことを口走った。
「と、とにかく、失礼します」
もう二度と、この公園をウロウロするのはやめよう。
心に固く誓いながら、足早にその場を後にした。